犬:エヴァンゲリオン劇場版:|| 〜渚カヲルと押井守の共通点〜

幾原邦彦渚カヲルのモデルになったという話は有名ですが、
だからといってそこで思考を止めて良い理由にはならないでしょう。
渚カヲル幾原邦彦」という定説に縛られ
柔軟性を奪われてしまった現代のエヴァオタの思考に
僕は少なからぬ危機感を覚えます。
 
庵野と幾原が温泉で
「君の心はガラスのように繊細だね」「///」
のような会話を実際に繰り広げたことがあったらしいとはいえ、
それをそのままカヲルと幾原をイコールで結ぶ証拠とするのは横暴です。
 
それに、カヲルというキャラクターが作品によってはしばしば
当初とは違ったアプローチで描かれることがあったのも忘れてはいけません。
カヲルは貞本版やあまたの二次創作を経て、新劇場版で再び描かれたのです。
『Q』公開直後の熱狂から少し時間が経ち、
BD/DVDが発売されたことで本編を冷静に観返すことができるようになった今だからこそ、
私たちは過去の作品全てに通底する新たなカヲル像を見つけ出さなければならないのです。
 
早速『Q』本編を振り返ることで、本題に入っていきましょう。
『Q』において一貫して超絶美形として描かれるカヲルですが、
1ヶ所だけ、違和感を覚えるカットがあります。
それがこれです。 

シンジから下の名前で呼んでもいいと言われ満面の笑みのカヲルくん
 
このカヲルの顔は他のシーンと比べ明らかに異質です。
どう見ても美形の笑顔という感じがしません。
ひとまず、ここで異質な表情となっている理由は、普段隠されているカヲルの内面が
シンジと心が通じ合った拍子に表に出てきたためであるとでも仮定しておきましょう。
 
何よりも問題なのは、この笑顔に着目した際、
私たちが強烈なデジャヴュに襲われることとなる点です。
この顔、よく見てください。
 

 
 

 
 

・・・そうです、この笑顔は押井守の笑顔と全く同じなのです。
この灯台下暗し的事実に直面したとき、私たちはそれまで無意識に見落としてきた
渚カヲル押井守の驚くべき共通点に気づくことができます。
それは即ち……
 

圧倒的なまでの「カヲル=押井」感です。
 
キャラクターのモデルが幾原だったという理由だけで、
長年の間とんでもない見落としをしていました。
なんとカヲルは押井的キャラクターとして認識されるべきだったのです。
そうです、そうだったのです。
どうしよう、ここまで書いたけどオチを考えてなかった。
見切り発車の怖さを思い知っています。
まさに「槍でやりなおす!」と言いながら突っ走ったシンジ君状態です。
物事はきちんと計画を立ててから行うべきなのです。
それを『Q』という作品は私たちに訴えかけようとしていたのではないでしょうか。
BDで修正されたヴンダー発進までのシーンは、雪の効果とか、なんか色々格好良くなってました。
やはり手直しできる時間があると作品のクオリティも上がりますね。
長い製作期間といえば、押井監督の『ガルム戦記』がついに実現するようで。
十数年越しの実現ということで期待してます。
 
………期待してます!!