『エヴァ』テレビ版感想:14話 職人芸なクッション回

1日に2〜3話分の感想を書くとなると所要時間的に色々犠牲にしないといけなくなってくるのでいよいよ修行じみてくる。
 
第14話、「ゼーレ、魂の座」
 
・「サキエル」、「シャムシエル」等、使徒の名前が始めて出てくる。これらの呼称を考えたのは誰なんだっけ。庵野監督は気に入ってないようで、未だに無かったことにしようとしてるけど。



 
・今回AパートはBGMは極力使わず、SEとテロップだけで進行していてドライな感じが格好良いのだが、しばしば資料を読み上げる形で登場人物の長いモノローグが被さる。その中でも印象的なのが、ケンスケのもの。

相田ケンスケの個人資料より抜粋 碇は何も言わないけど、あの時目標の火粒子砲から零号機が身を呈して初号機を守ったんだと思う。いや、そう確信する。その理由は一つ。綾波だ。綾波は自分の存在を希薄に感じているように見えるからだ。ペシミズムとも違う何かを、彼女は既に持っていると思う。同じ14歳とは思えないほどに。

ケンスケさん、あなた何者ですかw どうやったら綾波の性格だけを材料にヤシマ作戦の工程を推理できてしまうんだ。
 
・9話のユニゾンキックはパイロット二人の叫び声がBGMで隠れてしまっていたけど、今回の総集編で始めて掛け声がお披露目。収録したのが無駄にならずに済んでめでたし。

使徒の侵入について、ゼーレに厳しく追求されるゲンドウ。今回(特にAパート)は総集編という意味合いが強いが、この出来事は前回の13話よりも後に起こったもの。総集編部分は「使徒にまつわる調査報告」を模して構成されるのだが、13話の使徒侵入は、ゼーレには「誤報」として通知されていたため、それを問いただしている場面としてしか描かれない。この辺芸が細かい。新規作画を一切使っていないエコっぷりも素晴らしい。

 
・Aパートで総集編らしい総集編は終了。Bパートは冒頭から雰囲気変わって、綾波の深層心理を覗き見る感じに。
のっけから綾波中二病ポエムで癒される。ポエムが終わると、これまでの作画を使い回しつつ、新しい展開が。

山、重い山。時間をかけて変わるもの。
空、青い空。目に見えないもの。目に見えるもの。
太陽、一つしか無いもの。水、気持ちの良いこと。碇司令。
花、同じものがいっぱい。いらないものもいっぱい。
空、赤い、赤い空。
赤い色。赤い色は嫌い。
流れる水。血。
血の臭い。血を流さない女。
赤い土から作られた人間。
男と女から作られた人間。
街、人の創り出したモノ。
エヴァ、人の創り出したモノ。
人は何?神様が創り出したもの。
人は人が創り出したもの。
私にあるものは命、心、心の入れ物。エントリープラグ。
それは魂の座。
これは誰。これは私。
私は誰?私は何?私は何?私は何?私は何?
私は自分。この物体が自分。
自分を作っている形。
目に見える私。
でも私が私でない感じ。
とても変。
身体が溶けて行く感じ。
私が分からなくなる。私が消えていく。
私でない人を感じる。
誰か居るの、この先に。
碇くん。
この人知ってる、葛城三佐。
赤城博士。皆。クラスメイト。2号パイロット。
碇司令。
あなた誰。あなた誰。あなた誰。

リツコ どうレイ、始めて乗った初号機は。
綾波 碇くんの臭いがする。

このポエムは、綾波が初号機に乗ってシンクロテストを行なっていたときのもの。最後の「あなた誰」という台詞に、初号機の素体の瞳とシンジの瞳が被さるように映し出される。初号機(ユイ)経由でシンジの残留思念的なものが綾波へと流れ込んでいるのだろうか。

・今度はシンジが綾波の零号機に乗る番。「綾波の臭いがする」という台詞が出るが、すかさずアスカに「なーにが臭いよ、ヘンタイじゃないの」とか言われる。綾波が言うと許されるのに、シンジが言うと変態呼ばわりされるという不条理。
・ダミープラグに難色を示す潔癖症なマヤたん可愛い。既に手が汚れまくりなリツコさんも素敵。

 
アスカ「どう、シンちゃん、ママのおっぱいは?それともお腹の中かな?^^」リツコ「アスカ、ノイズが混じるから邪魔しないで。」アスカ「はいはい!なによ皆してシンジばっかり甘やかしちゃってさ。」

アスカの性格の悪さには常々和まされる。
 
・実験中に零号機が暴走して、試験的に零号機に搭乗していたシンジがそのまま取り込まれそうになる。暴走した零号機は綾波などがいる管制室めがけてグーパン。ミサトは零号機が綾波を殺そうとしたのだと思ったようだが、リツコによれば零号機が殴りたかったのは綾波ではなくリツコの方。

 
そういえば零号機のコアについては謎が放置されてるんだっけ。シンジが取り込まれる直前に垣間見る目がイっちゃってる綾波のイメージから、個人的にはリリスの魂の一部が入ってる印象を受けるけど。

 
久々にエヴァwiki「零号機のコア」に関する設定を調べて、ざっくりまとめてみた。だいたい4つの説が存在するみたい。どれも矛盾する点があって、決定版は無いという印象。

リリス説:リリス=レイの魂は一つであるという弐拾参話『涙』でのリツコの台詞と適合しない。
ナオコ説:シンジがシンクロできてしまうのはおかしい。
魂なし説:エヴァには心がある」「エヴァには人の魂が宿らせてある」という台詞と矛盾する。しかし、魂にあたるのはあくまでパイロットであり、コア内の母親の魂はそのつなぎに過ぎないという反論も存在する。第拾四話『ゼーレ、魂の座』でレイはエントリープラグを「魂の座」と言っており、このことを裏付けているとも言える。
一人目のレイ説:一人目の綾波の魂が二体目の肉体に移行される際に、一部が分割されて零号機に移されたとする説。リツコの台詞によれば、「魂は分割不可能」だが、惣流・キョウコ・ツェッペリンが魂の一部を弐号機に吸収された後も、多少は意思を持って生存していたことを、魂は分割可能な根拠とする。
・『エヴァンゲリオン2』では「魂なし説」が採用されている。
 
EvaWiki “「零号機のコア」論争”から勝手に要約

http://evemedia.org/evawiki/%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%E9%9B%B6%E5%8F%B7%E6%A9%9F#.E3.80.8C.E9.9B.B6.E5.8F.B7.E6.A9.9F.E3.81.AE.E3.82.B3.E3.82.A2.E3.80.8D.E8.AB.96.E4.BA.89

「魂なし説」も結構ソレっぽいけど、やはりこれでは零号機が暴走する理由が薄くなってしまう気がする。それだったら「一人目のレイ説」か「リリス説」のほうが納得できるかな。「リリス説」はリツコの台詞と合致しないと指摘されてるけど、「リリス=レイの魂は一つであるという弐拾参話『涙』での台詞」も、「(完全な形で定着する)レイ=リリスの魂は一つである」という意味であったと解釈すれば、無理矢理通らないでもない気が。……まあ、実際はこの辺の設定はスタッフの中でも適当なはずなので、そんなに重要ではないw
確か初見時は勝手にナオコの魂が入ってるものと思ってたけど、今見返してみるとナオコの精神はMAGIの方には息づいてるように描かれてるけど、零号機ではそれは感じないかな。
 
次回予告。「友人が次々と結婚していく中、一人焦りを感じるミサト。このままでは、引き出物を配ることなく、コレクターに終始しまう。マジにゲロマズな状況下。残された二十代すらもあと僅かしかない。三十の大台へのステップを着実に踏みしめている事実。果たして、加持との再開は彼女に与えられたラストチャンスなのか!?次回、「嘘と沈黙」。さーて、この次も、サービスサービスぅッ!」
ビデオフォーマット版の次回予告ふざけすぎwww テレビ放送版では「友人が次々と結婚していく中、一人焦りを感じるミサト。果たして、加持との再開は彼女に与えれたラストチャンスなのか。次回、嘘と沈黙。」という比較的シンプルなものなのにww 本編のシリアスな映像が浮きまくっててひどいw 最後の「サービスサービスぅ!」もヤケ気味で、いつもより語尾の声が裏返ってるw

 
・13話という特異なエピソードが挟まってるので分かり難いけど、12話「奇跡の価値は」でシンジ&ゲンドウ、ミサトの描写が一段落した時点で、鬱々とした展開へのステップが着実に踏みしめられているように思う。14話はそのクッションとなる回で、15話からスムーズに暗い展開へと繋がっていく(15話はまだドラマが先行しているが)。
今回、Bパートの綾波ポエム後は最低限の作画リソースで話が動かされていて凄い。コンテは庵野さん。こういった土壇場の工夫が素晴らしい。
 
今週中に全話感想が終えられるよう、なるべく毎日二話ずつ感想を書いていきたい。
というわけで次回に続く!
・次回感想→『エヴァ』テレビ版感想:15話 私は雑巾になりたい
・全話感想もくじ→『エヴァ』テレビ版〜旧劇場版/『新劇場版:Q』全感想目次