貞エヴァ13巻 リツコが良かった


発売から遅れること数日、やっと貞エヴァの新刊を買ってきた。
概要はネットで遭遇したネタバレや、本誌を買ってる知り合いからの回し読みで知っていたのだが、シンジがアスカを助けにくるところで不覚にも号泣してしまった。
前向きなシンジに心動かされたとかそういう綺麗な理由ではない。貞エヴァ版の量産型エヴァのシーンはある程度熱血に描かれていて燃えるが、熱血なシンジそのものに心動かされたというよりは、未だEOE版のシンジに強い共感を覚えている自分を再確認させられ、強烈なデストルドーを誘発された形だ。
エヴァはかなり良くできているとは思うが、テレビ版〜EOEへの思い入れの強さから、つい悪口を言いたくなってしまう性分だ。「加持の少年時代」等、世界観の余白を埋めるテクストとしては嫌いではないが、これまでの話の本筋はテレビ版の縮小再生産に過ぎないという認識だった。だがここに来て、貞エヴァならではの価値を感じるようになってきた。新劇場版がわりと早い段階で「別モノ」路線を歩みだしたのに対し、貞エヴァは紛いなりにもEOEに該当する地点まではテレビ版をなぞってきている。おかげで貞エヴァとテレビ版〜EOEの差分を見れば、自分がエヴァのどこが好きだったか、すぐに答え合わせができてしまう。そういう意味では非常に価値がある。
エヴァがこれまで連載を継続してきたことは、素直に凄いと思う。十五年以上もの間(途中で中断をはさみつつも)一つの作品に取り組み続けることは凄いことだ。エヴァの場合は既に完成されているものを清書しなおしているようなもので、物凄くしんどそうなのだが。貞本さんが途中で鶴巻作品や細田作品の仕事をかけ持っていたのは、その辺のバランスを取る意味でも重要だったのだろう。
物語はいよいよ佳境だが、うまいこと着地できるだろうか。ここ最近は刊行ペースが2〜3年に一冊という形なので、完結までは早くて5年はかかりそうな気がする。下手をすると新劇場版よりも完結が遅れることになりそうだが、貞本さんにはこのまま新劇場版には影響されず、独自路線で求道していってもらいたい。