『UN-GO』感想

昨年ノイタミナ枠で放送された『UN-GO』ですが、内容がギチギチ過ぎて肌に合わないと感じたため、2話で観るのをやめてしまっていました。ところが先日HDDの整理をしていて3話以降を消そうとしたのですが、ちょうど『UN-GO』と同じく會川昇が脚本参加をしている『エウレカAO』をまとめて観ている時期でもあったので、何気なく3話を見始めたのですが…なにこれすっごい面白い!
結局一気に全話観てしまいました。
あんまり面白かったので脚本集買ってしまおうかなと公式ページを見ていたら、錦織博監督のこんなコメントを発見。
 

會川さんの脚本も一見、通常の脚本のフォーマットに沿って書かれているので、演出者は脚本をもとに演出のプランニングとシーン設計を行う。しかし、場面設定や人物の掘り起こしをする過程で、通常の作品とは何か違うことに気づく。舞台となる場所の歴史的背景、実際の人物をモデルにしたキャラクターのテーマ的暗喩など、様々な要素が多様に詰め込まれ、複雑に絡み合っているのだ。それはまるで圧縮されたファイルを解凍するように、膨大な情報量となって押し寄せてくる。
(中略)
 演出者は定尺に収めるために再びイメージを圧縮し、閉じ込めていく必要がある。それは脚本のとおりにいくこともあれば、すでに復元できないこともある。絡み合う要素を取捨選択しながらドラマとしての映像を作り出していく。つまり、會川脚本はそれ自体、原作小説や論文のようなものであり、演出者独自の解読やアプローチが必要になる。描かれた膨大な情報は映像の設計図という枠をはるかに超えている。それゆえに會川作品は、まさにジャンルとして「脚本アニメ」だと言えるのではないだろうか。

ANIMESTYLE ARCHIVE UN-GO會川昇脚本集 | コメント:錦織 博

 
うーむ、ますます脚本集に興味が出てきた。ギチギチ過ぎると感じいたのは、錦織監督の言葉を借りると「解凍→再圧縮」のプロセスが上手くいっていなかったからだろうか。
しかし話を詰め込み過ぎと感じたのも3話くらいまでで、その後は特にそういった不満はなかったんですよね。一気にギアが噛み合った感じといいますか。
ギアが噛み合った瞬間がどこなのか、それにはどういった理由があるのか気になったので少しググってみたのですが、會川氏のインタビューによると序盤(1、3、4話)とそれ以降で作品の方向性に転換が存在しているらしいのですね。脚本の執筆は「1話→3話→4話→2話→それ以降の話数」という順だったみたいです。
 

會川 「UN-GO」のシナリオは、放映話数順ではなくて、1→3→4→2という順番に書いていたんですね。そうしたら、4話まで書き終えたときに、震災が起こってしまったんです。それで取りあえず1ヵ月くらい書けなくなりました。
(中略)
會川 1話、3〜4話の新十郎は、犯人の罪を追及したり、告発する側なんですね。自分自身が背負っているものは周囲には伏せていて。でも、震災の後に書いた2話と5話、そして劇場で上映した「UN-GO episode:0 因果論」は、新十郎自身の弱さとか内省的なもの、つまり、自分自身も告発者であることは宿命づけられているけど、本当にそれが正しいのかどうかは自信がない。
 「むしろ真実を暴くことが人を悲しませちゃうことになるんじゃないの」、と彼自身が分かっている。そんなふうに変わったんです。これははっきりとした路線変更であり、キャラクターの変化ですね。

ASCII.jp:人は必ずブレるもの 「UN-GO」脚本・會川昇氏が語る【前編】 (2/4)|渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」

 
僕はこれを読んで最初、「詰め込み過ぎ」と感じていたのが作品の方向転換という決定的な理由によって解消に向かったのかもと思いましたが…うーん、どうなんでしょう。方向転換によって作品により魅力を感じるようになったのであれば、2話の時点で引きこまれていてもおかしくなかったわけですよね。
僕が詰め込み過ぎと感じていた理由としては、毎回一話完結型の事件が起こり、舞台、登場人物がめまぐるしく登場していて、情報の密度が高すぎたせいだったと思います(1、2話の記憶がおぼろげなのでちょっと曖昧)。その点、4話に対する印象が良かったのは、3&4話が前後編のような構成になっていて、情報がうまく分散されていたからな気がする。
一話完結型な話が基本となっている本作ですが、純粋な意味での「一話完結」となっているのは1話、2話、5話、6話だけなんですよね。その内1話と2話には正直それほど良い印象が無い。5話、6話では事件のまとまりと共に、主人公の掘り下げが上手く行っていて凄く良いけど。その後はその後で、2〜3話かけて描かれるエピソードが続いて、非常に面白い。
結論としては、やはり1話の導入がいまひとつだったという事なのかな。しかし逆に言えば尻上がり的に面白くなった作品とも言えるか。
 
…って、ここまでうだうだ書いているのはかなり個人的な悩みの部分で、とにかく声を大にして言いたいのが、舞台背景の情報が整理されてきて、その上方向転換によってキャラクターに深みが増す5話以降はすっげー面白いよ!ってことです。