今週のハンター(#337) 「ああ…同じ事 くり返してると思ったよ」

今週のハンターハンターが凄い。一話完結型のエピソードはこれまでも何度かあったけど、その中でも屈指の良さだったと思う。絵の荒れ方に反比例するように面白さがスパークする素晴らしい冨樫っぷり。ありがとう冨樫。
・ゴン側の「カイトが生きてた事に対する喜び」の描写が一切なくて、再会するなりすぐに謝罪モードというのは本来違和感を感じそうなもんだけど、そうならなかったあたりに冨樫の巧さが現れてる気がする。これのために先々週にゴンがカイトの悲劇に大きな責任を感じている旨を再確認していて、今回も「コアラの自己満気味な懺悔」→(「ゴンの謝罪」→)「コアラ謝罪」って流れに組み込むんでるんだよね。
・もうね、カイトが格好良すぎる。スパルタキャラってともすると鼻につく鬱陶しいヤツに見えるんですが、カイトの場合はそれが余りある格好良さで打ち消されてる。懺悔するだけして、過ちを「くり返さない」ために自殺してしまいそうなコアラを「あたちと来い」「これは義務だ」「自ら死んでリセットなんて誰が許すか」と命令する。コアラがそもそもハードボイルドで格好良いですが、その一段上を行く格好良さ。スピンじゃなくても惚れちゃいそう。
・コアラの死生観も興味深い。

「オレがこのくらい小さくなったら終わりだろうと思っていた物質には オレの想像がおよばなかった力があった」「オレ達から見れば花粉程度のものすごく小さな物質が オレ達の健康に影響を与えるほどのエネルギーを何万年何億年と出し続けることができる」「さらに小さなDNAには俺達の殆どを形成する膨大な量の情報が二重螺旋状に詰まってる…」

「貧者の薔薇」に続いてまたまた放射能に着想を得たっぽい部分。そんな「転生」や「魂の概念」といったトピックを、今回の「懺悔」というエピソードに紐付けするストーリーテリングの見事さったらない。とんでもなく面白いものを作る人ってのは、同じものを目にしていてもそこから広げられるイマジネーションの幅が違うんだなぁと。冨樫凄い。
 
・久々にハンターの感想を書いたのは、本編がとんでもなく面白かったからというのもあるんだけど、何より絵が荒れていたから。
キメラアント編中盤以降は「10週掲載→休載」のようなサイクルがあったので、全然絵が荒れなくなったんですよね。キメラアント編は『ハンター』…というか、「冨樫作品」という枠で見ても、かなり特殊なエピソードだったと思いますが、それが終わったら心機一転、冨樫はそれ以前のサイクルに戻るつもりだと思ってたんです。話自体はキメラアント編以前の雰囲気に戻ったと感じてるので、予想は半分的中したと思ってるんですが、予想外だったのが連載ペース。休載してた頃のストックがあったとしても、いくらなんでも半年以上休載ナシというのはおかしい。
最近になっていよいよ、「被災地復興のために微力ながら支援を続けるためにも、出来る限り長く頑張ります。よろしくお願いいたします。 <義博>」というコメントが単なるリップサービスじゃなく、本気の覚悟の言葉だったのではないかと考えはじめていたのですが、先週の「インフルに感染し関節痛から腱鞘炎を併発。書くことできて良かったね。<義博>」というコメントを裏付けるような今週の荒れまくりな絵を見て、不覚にも心を動かされてしまった。「被災地のために手の届く範囲でがんばります!」みたいなコメントは誰でもできるし、実際コメントした人の多くは手の届く範囲で頑張ってるのかもしれないですが、それが他人の目に見えることってあまりないですよね。それが普通。
しかし冨樫の場合は手の届く範囲で頑張った場合、頑張り度合いが嫌でも透けて見えるという。冨樫ずるい!感動しちゃうじゃないか!少年マンガ的に気合と根性で毎週描いてくれてる冨樫像が脳内に出来上がりまくりなので、冨樫の頑張りに(勝手に)応えるためにも次回の休載が入るまで毎週感想を書こう。と、今週読んでいてつい決意してしまった。正直後数回で(下手したら来週にも)休載に入ってしまいそうですが。