『マン・オブ・スティール』感想

公開日に『マン・オブ・スティール』をIMAX3Dで観てきた。今年観た映画の中でぶっちぎりの興奮!!以下ネタバレ感想。

 
■ハリウッドが背動的なものを頑張るとこうなる
とにかく映像的な満足度の高い作品だった。特に終盤のアクションは口をあんぐりしてしまうほど。市街地を登場人物とカメラが共に駆け抜ける映像は元々大好きだったが、今回はそれを新しい次元で見せられた感じ。アニメでも、背動でグリグリ動いていて凄かった『超時空要塞マクロス』や、近年になると背景をCGにした『鉄コン筋クリート』、『マクロスF(2話とか)』、今年公開された『ドラゴンボールZ 神と神』など、素晴らしい作品はたくさんあるのだが、あれを実写でやられるとまた違った迫力がある。なにより3D映像なので、高層ビル群の隙間を空間的広がりを感じさせる映像で疾走するあの快感!思い出すだけでまた観たくなってきた。

鉄コン筋クリート』冒頭

 
超時空要塞マクロス』18話(6分8秒あたり)

 
ビルや車の破壊描写もとにかく素晴らしかった。ビルとは殴って壊すもの!と言わんばかり。アニメを見ていると「あ、この建物はセルの感じが違うからこれからぶっ壊されるんだな」とワクワクする瞬間があるが、それに近い何かをたくさん提供してくれる。
それから順番が前後してしまうが、主に冒頭のシークエンスで印象的だったのが、光の描き方。

フレアがエフェクト気味に3Dで飛び出てきて格好良かった。あまり画面に馴染ませるということをせず、意図的に別レイヤーに配置しているというか。光自体に主役級の格好良さが与えられているようだった、ザック・スナイダー監督が3D映画を撮るのは初めてだったかと思うが、彼が3Dをやるとこういうところに凝りだすのかと、なかなか面白かった。
 
父親のテンションがこわい
お話としては、主人公が自分のアイデンティティや、地球の育ての親と宇宙人の生みの親との関係で悩み、スーパーマンへと成長していくというもの。終盤はとにかく殴り合いのアクションにフォーカスするので、「丁寧」なドラマが描かれるのは主に序盤から中盤。しかし地球と宇宙双方の父親がカルト宗教に走った人みたいな言動を繰り返すので、そこで予想外の面白さ生まれていた。
この映画に謎のやばさを与えた主な原因は宇宙人の父のほう。彼はまだ赤ん坊の主人公を「我々の希望だ」とか言って、自分たちの星から逃がそうとする。このとき母親は遠い地で息子が阻害され寂しい思いをするのではないかと心配するのだが、父親はそんなことはないと力説する。これが「私たちの息子なのだからきっとやっていけるさ」くらいであればただの親バカで済むのだが、「地球で人々の救世主となる!」とか、どうしちゃったのという勢いが怖い。父親役を熱演するラッセル・クロウの目がだんだんイっちゃった人のそれにしか見えなくなってくる。地球の文明について殆ど何も知らないはずなのに、なぜ救世主になると言い切れるのか。そもそも何から救うのかとか。色々盲信してて怖かった。
主人公がその怖い父親から逃れ、やっとのことで地球にやってくると、今度は地球の育ての父がこれまた少し変な人なのだ。いや、こちらの父は比較的まともなのだが、なにぶんこちらとしてはラッセル・クロウを引きずった状態なので、少しでも変なことを言うと「こいつもヤバイんじゃないか?」と防衛本能が一気に働いてしまう。育ての父は、幼少期に主人公が超常パワーでクラスメイトを救った際、「力は隠すべき」との理由から、「クラスメイトを全員見殺しにすべきだった」的なことを言う。普通ならよくやったと褒めそうなところでそんなことを言うので、かなり印象的なシーンだ。息子の正体がばれたら生活がめちゃくちゃになってしまうという父の苦悩がひしひしと伝わってくる。しかしその少しあとで、「でもいつかは皆から分かってもらえるときが来る」みたいなことを言いだす。父の人間的な悩みを垣間見た直後だけに、「お前は実は宇宙人なんだ。でもいつか皆にも分かってもらえるよ。ついでに言えばお前には使命がある……!!」みたいなことを切り出されると、あ、こいつもやべえ!となってしまう。
さらにヤバイのが、それまで自分の人生にうだうだ悩んでた主人公がまんざらでもなくスーツを着だすあたり。そりゃ『スーパーマン』なのだからいつかは着てもらわなければ困るのだが、父親の件があるだけに、お前その道を選択してしまって本当に大丈夫なのか?と妙に心配になってしまうのだ。主人公が髭を蓄えた風来坊的な格好から、マントを着込んだ瞬間、髭がつるりと剃られた好青年になるカットの切り替わりがヤバさのピーク。


マントを着るシーンでこれを思い出した。そして宇宙人が攻めてくるのでなんだか幸福の科学映画っぽい。

スーツを着たあとに、わはははと空を無邪気に飛び回るシーンがあるが、あそこは釣られこちらまで笑ってしまった。予告だと神々しく空を飛び回るシーンしか映ってなかったので、そことのギャップが面白かった。
ちなみに敵と対峙した際に拳が交互にアップになるシーンがあったが、あれは『ファイナル・ジャッジメント』にもあった。

 
■その他面白かった点
飛び回りながら壮大なスケールでバトルが描かれるのに、ポイントとなるシーンだけなぜかヒロインが(徒歩で)駆けつけてくるあたりが良かった。ヒロインの同僚の九死に一生劇が超絶どうでもよかったのも良かった。
スーパーマンが敵にとどめを刺すかどうかで葛藤するシーンも面白かった。そういえばスーパーマンって敵を殺さないヒーローだったったなと。今回スーパーマン達は街中で破壊の限りをつくしてるので、飛び回ってる間に巻き添えで何百人か死んでるぐらいの感覚でいたいが、実は毎回人を避けながらビルを壊したりしてたのか。
クリプトン星人が肝心なところでポカをたくさんやらかしてて、憎めないところも良かった。星の滅亡が近いと分かってるのに、クーデターを企てたグループを星の外に幽閉したり。結果的にそいつらだけ助かってるじゃん!あと、ゾッドの部下の女兵士がジャンプから着地をする際の演技で中二病的ニュアンスをよく出していて凄くかっこよかった!
クリプトン星人関連では、主人公が敵宇宙船に拉致られるときにヒロインも同行を求められたのが秀逸だった。クリプトン星人としては彼女を宇宙船に乗せる理由は一切無いのに。完全に主人公の脱出を手助けさせるためというストーリー上の都合。
 
とまあ、あらゆるところが楽しい映画だったので、あと2、3回は映画館で観ると思う。