突然ですが、最近格ゲーマーのVlogが増えている件について調べました! なぜ人は夏に自由研究をやりたくなるのか。
ここ数年で格ゲーマー(主にプロゲーマー)によるVlogが珍しくなくなり、世界中で大会が開催されるたびに日夜さまざまな動画が投稿されています。Vlogの内容は多岐に渡りますが、個人的には海外大会でのちょっとした観光や食レポ、現地プレイヤーとの交流など、プロゲーマーの普段なかなか見られない生活に触れられるのが新鮮で、日々の楽しみとなっています。
「ストリートファイター」といえば世界中を旅してストリートファイトを繰り広げていく世界観ですが(ジャパーン! USSR!)、それを現実世界で再現しているようで、そこにワクワクさせられるのかもしれません。
垂れ流しで見てたときどさんパリ滞在Vlog、工事中のノートルダム大聖堂がやたらかっこよかった https://t.co/mhy11tJXb1 pic.twitter.com/6h9busfpnI
— さめぱ (@samepacola) 2025年4月7日
そしてだんだん気になってきたのが、いつ頃からこうしたコンテンツが流行りだしたのか、ということです。
「スト6」の発売は2023年6月。個人的には2024年ごろから一気に増えた印象だったのですが、自分は「スト5」(2016年2月発売)の序盤でストシリーズから一時期離れていたこともあり、「スト5」の中~末期の様子はほぼ知りません。とはいえ少なくとも「スト4」(2008年〜)のころはまだ全然なかったはずです。
ので、調べてみました。手動だと気が遠くなる作業量でしたが、AIくんのアシストもあり数時間でザクザク数字がまとまったので、以下データを残していきます。
調査手法
今回は調査対象を「YouTube」と「日本のスト6界隈」に絞りました。Twitchでも現地配信は盛況ですが、集計の手間を考えて割愛しています。
まず「格ゲーチェッカー」さんの「プロ格闘ゲームプレイヤー一覧」から「スト6」のプレイヤーをリストアップし、YouTubeチャンネルの有無を調べました。その上でGoogle Cloud Consoleの「YouTube Data API v3」を使い、リストアップしたチャンネルの全動画タイトル・動画概要欄・投稿日を取得。その際、GASを使って、スプレッドシートに半自動で集計する仕組みを作ったのが今回の技術的な難所でした。サンキューChatGPT。
あとは気合です。動画タイトルや概要欄に「VLOG」「Vlog」「vlog」「Travel」「日常」「旅」「遠征」「滞在記」「現地」といったワードが含まれるものを抽出し、その400件以上の動画を目視で確認。関係ないものを除外していきました。
一部主観も入るざっくりとした絞り込み方なので厳密ではありませんが、大まかな傾向をつかむにはそれなりに面白いデータになったと思います。
スト6でVlogが7倍に
気になるVlogの件数は次の通り。調査した8月19日時点では2024年・149件、2025年・147件とほぼ同数でした。現在サウジアラビアで「eスポーツワールドカップ」が開催中で、すでに何本も新しいVlogを目にしているため、執筆時点で2025年の本数が前年を上回っているのは確実です。

2022年:21件
2023年:74件
2024年:149件
2025年:147件(8月19日時点)
確認できた限りだと、最初のVlogは東大卒プロゲーマーとしておなじみ「ときど」さんが投稿した、2022年7月30日の「サウジアラビア滞在記」でした。
コロナ禍でまだ海外渡航のハードルが高かった時期の遠征ということもあり、動画ではサムネでもマスク着用。「日本・サウジアラビア eスポーツマッチ」に向けて、成田空港からドバイを経由し、サウジアラビアへと渡る様子を記録しています。
道中でネモさんといった他の有名プレイヤーとの交流や、ホテルの部屋紹介、練習部屋の風景、海外の強豪XianやMister Crimsonへのインタビューなど、すでに現在のVlogに近い内容となっています。
余談:格ゲーマーVlogの定義は難しいですが、今回は「遠征先でランクマしてるだけの配信」「格ゲーと無関係の企画(例:「◯◯に行って遊んできた」等)」といった動画は集計から外しています。迷いましたが、ウメハラさんの「ウメ散歩」(近所を散歩したり300km散歩したりする配信)系も割愛しています。
2022年~2023年中盤まではひたすらときどさんが牽引し、他はごく一部の人が投稿していた格ゲーVlogですが、様相が一変したのが2023年8月。

これは米ラスベガスで行われる毎年恒例のビッグイベント「Evolution Championship Series(通称「EVO」)」と、サウジアラビアのリヤドで開催された世界大会「Gamers8(現eスポーツワールドカップ)」のタイミング。
それまでほぼときどさんだけで数字を積み上げる形でしたが、ここで一気にハイタニさん(9件)、Sakoさん(4件)、翔さん(3件)、ACQUAさん(2件)、ガチくんさん(2件)と、さまざまなプレイヤーがVlog界に参戦しました。
内容を見ていくと、翔さんはGamers8で優勝し、賞金4000千万ドル(約6000万円)を獲得した様子を動画化。
一方でハイタニさんは、ホテルの自室から大会の様子を振り返る雑談配信を多数動画化。作り込まれた前述のときどさんの動画郡とは対象的な内容なのが興味深いところです。
ハイタニさんは、「格ゲー五神」の一角として知られる実力派プレイヤーですが、EVO 2023ではプロ第一線を退いた「ストリーマー」として大会に参加。にもかかわらず5位入賞を果たし、当時話題となりました。
なお、所属チームの「REJECT」公式チャンネルからは、ハイタニさんの活躍などを記録した凝った動画も投稿されていました。
「REJECT」による動画
ハイタニさんのホテル配信のようなゆるい配信・動画は現在もさまざまなプレイヤーが投稿しており、最近だと、Twitch上でも人気を博している、マゴさんのシェアハウス配信がまず挙げられるでしょう。今回Twitchは未集計ですが、YouTube向けに動画化されたものはカウントしています。
マゴさんの配信では、Airbnb(エアビー)で借りた豪華なシェアハウスの様子や、多数の日本プレイヤーとの共同生活、そして海外プレイヤーとの練習風景が長時間垂れ流しになるのが恒例となっていて、独特の居心地の良さがあります。
余談:マゴさんは先日配信中に体調不良により倒れてしまい、現在サウジアラビアで開催中のeスポーツワールドカップ(LCQ)へは欠場となってしまいました。ぜひ体調を整えていただいて、SFLや来年のカプコンカップ出場に向けた活躍に加え、これまでのような現地配信に期待したいところです。
終わりに これまでの格ゲー配信とVlog
まとめると、スト界隈でのVlogは「ときどさんが2022年7月末にスタートし、2023年から急増、現在も増え続けている」というのがざっくりとした結論になります。全体の本数を円グラフにするとこんな感じ。ときどさんのすばらしさがよく分かります。

「ときどちゃんねる」と「ときどちゃんねる以外」をグラフ化するとこんな感じ。ときどさんが着々とにVlog(ときどさんのチャンネルでは「旅行記」というワードを使っています)を増やし、格ゲーVlog界の先頭を突っ走っているのが分かります。


ときどさんの場合、もともと英語でコミュニケーションできたことがVlogのスタートダッシュを決める大きな要因だったのは間違いないでしょう。加えて、ときどさんは過去にTwitchも活用していましたが、2023年8月に配信プラットフォームをYouTubeに一元化。競技シーンとYouTubeでの動画発信を両立させることに注力していると公言しており、プロ活動の一貫としてVlog作成にガチってきたともいえます。
他方で最近は、これまで語学堪能なイメージのなかったガチくんやマゴさんなども、海外勢と自然に英語でやりとりする様子を動画化しており、海外でカジュアルに発信するプレイヤーが着実に増えている印象。立川さんなども、活躍の幅を広げるために英会話に力を入れていると語っていました。
これは別に語学力が発揮される動画ではないですが、町並みが綺麗だったので埋め込みました
今回調べるにあたり手が回らず心残りなのが、海外プレイヤーの配信事情。軽く検索した感じだと、日本ほど熱心にVlogを投稿しているプレイヤーはいなそうですが、暇を見つけてまた調べてみたい気もしています。
格ゲー配信の歴史を振り返ると、「スト4」はニコニコ動画、「スト5」はMildom、OPENREC.tvなど、時代によって「場」が移り変わってきた経緯があります。「スト4」はどこかアングラ感のあるゲーセン文化色がまだ色濃かったですが、「スト5」になるとPC・コンソール版が中心となり、コロナ禍ではオンラインのつながりがある種強制的に強化されました。近年は対戦会といったオフイベントでの交流もより活発になり、そして現在、Vlogという形で人気プレイヤーの日常や旅路までもが共有されるようになりました。
こうしてみると“観察記録”として自由研究にぴったりな題材だった気がしてきました。来年の夏には、またどんな風景が広がっているのか――引き続きヲチっていきたいところです。