『グレンラガン』、『パンスト』以降、ガイナはなんだか存在感が薄くなり、ごそっと抜けてスタジオトリガーを作ったそれまでのメインスタッフも、外部からは何をやってるんだかよくわからない状況が続いていました。
今石さんが『ブラックロックシューター』でサンジゲンと組んで面白いことをやったり、ゲーム『プロジェクトクロスゾーン』でトリガーがOPを担当したりはしてましたが、『グレン』と『パンスト』が大好きだった身としては、はやくあれだけボリュームのある新作が観たいというのが正直なところでした。
そんな思いにようやく応えてくれたのが、現在劇場公開中の『リトルウィッチアカデミア』。
監督・キャラデザは吉成さん。文化庁とJAniCAが若手アニメーターの育成を主目的に実施している「アニメミライ」なるプロジェクトの一環で制作されました。
“動き”が終始気持ちの良い作品で、キャラクターの細かな芝居がいちいち可愛らしかったです。ストーリーもシンプルで、30分程度の尺にうまく収まっていました。
主人公アッコは幼い頃見た魔法ショーに憧れ、魔女の養成学校に入学。しかし入学後、自分にとって憧れのまとであった魔法ショーのスターが、実は魔法界では嫌われ者だったことを知ります。
「あんな見世物の魔法」「世間の魔法使いに対するイメージを歪める」等々、アッコの目指す魔法使い像は周囲のキャラからボロクソに言われます。
アッコの憧れである「魔法」や「魔法使い」に対する風当たりの強さは、そのまま現実における「作画」や「アニメーター」に対する風当たりとして読み替えられるわけですが、このようなシンプルなテーマ設定がクライマックスのアクション作画によって見事にカタルシスに還元されていて良かったです。
また、先日アニメスタイルのスタジオトリガーイベントに参加してきたのですが、そこでの実況ツイートのまとめがあったので、リンクを貼っておきます。気になる人は読んでみてください(リトルウィッチ関連はリンク先ページの真ん中あたりからです)。
正直「アニメミライ」における「若手アニメーター育成」という目的は名ばかりな部分もあると思っていたのですが、イベントでのスタッフトークによれば『リトルウィッチ』はかなり企画趣旨を尊重して作られていたようです。
普通の制作現場ではスケジュールが厳しいため、たとえ原画のデキがいまひとつであっても、元のアニメーターに絵を戻して描きなおさせることはめったにしないそうです。しかし「アニメミライ」ではそのまま作画監督等が原画を修正してしまうのを禁止していて、きちんと元のアニメーターに指導をして、OKが出るまで描き直させる決まりなのだとか。絵的に相当リッチな内容なのに、本当に殆ど若手アニメーターが描いてるというのだから驚きです。
イベントでは「今後続編展開は有り得るのか」という客席からの質問に対して、「要望が多ければ『リトルウィッチ』単体での上映イベントや、続編制作に繋がる」という話が出ていました。魅力的なキャラクターの多い作品でしたし、是非そうした展開に期待したいです。
トリガーはこの後、今石監督によるテレビアニメを控えているのですが、こちらもひたすら楽しみ。
動画に「TVシリーズ第1作」とありますが、先日のイベントではこれについて面白い小ネタが。元々トリガーは今石監督の新作を作るために立ち上げられたスタジオで、最初に企画の着手がされたのも今石監督のテレビアニメでした。ところがいざフタを開けてみると、最初に世に公開された作品は『インフェルノコップ』。監督は雨宮さん。
見ての通り酷い作品ですw このためトリガーでは、『インフェルノコップ』がトリガー第1作であることはなるべく強調せず、『リトルウィッチアカデミア』を劇場第1弾作品、今石監督の新作をテレビシリーズ第1弾作品と、それぞれ区別して宣伝してるようですw 『インフェルノコップ』はあくまでYouTube第1弾作品!w
ただ、先日のイベントで今石さんが語っていましたが、インフェルノコップもしっかりとした企画意図のある作品のようです。以下、イベントでの今石監督と、大塚社長のトーク。
今石 『インフェルノコップ』ではアニメの最小単位を作りたかったんです。以前からもっとパッと思いついてパッと出したいという欲求があった。『パンスト』も元はそうでしたが、結局あんな大変な作品になってしまった。あれはあれで楽しかったのでよかったけど。というか僕はアニメのクオリティを下げたいんですよ(笑)。世の中のアニメのクオリティがこれだけ上がっていますが、これが本当に必要なのか。……というのを自分ではやらず雨宮にやらせる!(笑)
大塚 今石に任せるとクオリティリセットができないんです。自分で首を締めてしまうので。なので若い雨宮に任せました。
今石 絵がどれだけ酷くても面白いものを作るのが演出の仕事。それをあえてやってるのが『インフェルノコップ』なんです。
このように、『インフェルノコップ』が『リトルウィッチ』やこれから発表される今石監督の新作とは対極にある作風ながら、現状のアニメ界に対する問題意識を持ちながら真面目にエンタメを志して作られていることが強調されていました。
トリガーの人達はこれまでの仕事を含め、本当に好きでアニメを作ってるのが伝わってくるのが良いんですよね。今石監督の新作は年内にはお目見えするようですし、期待して待ちたいです。