『ピングドラム』最終回オールナイトイベントに行ってきた!

更新が遅れましたが、『ピングドラム』の最終回オールナイト上映会に行ってきましたので、簡単なレポートをしたいと思います。
既にTwitterや2ちゃんなどで多くの方がレポートしてますので、ここでは記事の最初に他では見かけなかった情報、このレポートの目玉を先出ししたいと思います。(まとまったレポートとしては「翻訳こんにゃくお味噌(仮)」さんのレポートが読み応えありました→『輪るピングドラム』最終回オールナイトイベント 翻訳こんにゃくお味噌味(仮)
 
■『ピングドラム』における「ペンギン」とは
イベント中にトークショーは三回行われ、面白いお話は色々ありました。中でも最終話上映後に幾原監督が語った、監督のお父さんの死にまつわるエピソード(後述)は、トークの締めくくりに出ただけあって、一番印象に残りました。しかしこの他にもう一つ、自分がポイントだと思ったもので、他の人が見落としていそうだと感じた、“『ピングドラム』における「ペンギン」とは何だったのか”についての監督の発言がありました。まず、その時のトークについて書きたいと思います。
その時の会話はだいたい以下のような感じだったと思います。

(池田プロデューサーから監督への質問は何かないかと聞かれ)
荒川:ペンギンってなんだったんですか?(会場笑)
幾原:ペンギンはペンギンですよ(会場笑)。南極とか、寒い所とかにいる鳥がペンギンですよね。
池田:今の答えで分かりましたでしょうか。
荒川:うーん・・・(監督を見つめる)。
幾原:僕ね、某「おばけのペケ太郎」が大好きだったんですよ(もちろんQ太郎のこと)。あいつって腹から色々出してくれるペケえもん(ドラえもんのことw)と違って飯食って寝てるだけじゃん(会場笑)。あと、ペケ太郎には妹のペケ子ちゃん(P子ちゃん)がいて、デフォルメされたキャラなんだけど・・・子どもの頃にペケ子ちゃんを見てエロスを感じたんだよね(会場爆笑)。
池田:監督何を晒してるんですか(笑)。
幾原:自分の作品にペケ子ちゃんを出したいという昔からの夢が叶いました!
池田:この答えで大丈夫ですか。
荒川:うーん・・・はい(監督を見つめながら)。

基本的に自作品の解説をペラペラ喋りたがらない監督ならではの、実にスマートな回答だったと思います。これ、最初に「ペンギンはペンギンですよ」と言ったときに、監督のいつもの軽口かと思って笑っている人が多かったのですが、監督はその後、「寒い所とかにいる鳥がペンギンですよね」と、不自然なまでに真顔を崩さずに、荒川さんをまっすぐ見据えたまま話を続けていました(監督の表情が見やすい前の方の席だったのはラッキーでした)。一見とらえどころの無い返答ですが、監督のいつもの軽口とは違う感じに気づいたのか、荒川さんも真剣に考え込んでいる様でした。僕も、監督はあそこで笑いを誘っていたのではなく、本気で荒川さんに答えていたのだと思います。
個人的な解釈としては「寒い所=氷の世界」という事で、ピングドラム』が「氷の世界」を舞台にした作品だから、ペンギンが出てきたんだよ、という監督の答えだったように思うのですが、どうでしょう。
監督が自分の言った事の真意についての解説を求められる前に、Q太郎とP子のネタ(以前も話題にした事アリ)に話をシフトさせて誤魔化しているあたり、うまいな〜と思いましたね。煙に巻かれてしまった人も多かったのではないかと思います。
 
■イベントの様子
それでは、一つのネタに絞った話はほどほどにして、その他イベントのレポートをざっくり書いていきます。
イベント会場はピングドラムとは縁が深い池袋にあるシネマサンシャイン。観客は400名!先日の「こそピン」イベントの観客100名ですらなんだか感慨深かったのに!池田プロデューサーは今回のイベントが5分でチケット完売だったと言ってましたが、実際は1〜2分で売り切れてたはずです。当日は開演前や休憩時間には限定グッズの販売も行われ、長蛇の列ができていたりで非常に盛り上がってました。
トークショーの登壇者は冠葉役の木村昴さん、晶馬役の木村良平さん、陽毬役の荒川美穂さん、苹果役の三宅麻理恵さん、美術監督の辻田邦夫さん、監督の幾原さん、そして司会進行がプロデューサーの池田さんでした。イベントの流れとしては

1話、12話、18話、20話、22話、23話の上映
1話上映前と23話上映後にトークショー
最終話の上映
最終話上映後に三度目のトークショー
トークショー後に最終話の再上映

という感じ。
荒川さんは初回のトークショーには数分遅れて登場。荒川さん、陽毬の衣装着用+陽毬と同じ髪型なせい完全にリアル陽毬状態。正確に言うと、遅れて走って入場してきたため息が上がっていて顔も紅潮していたので、病気で弱ってるときの陽毬状態。破壊力高すぎる・・・。メーカーの公式に陽毬の衣装を着用してる荒川さんの写真が掲載されてますね。→http://innocent-w.jp/pen-ino/pen-info.html(11月16日の記事)
次の日の仕事の関係で、最初のトーク木村良平さんが抜けて、二回目のトークショー木村昴さんが抜けました。美術監督の辻田さんは休憩中に池田プロデューサーに誘われたらしく、急遽最後のトークに参加。
本編の上映中は基本的には皆静かに集中して見入っている感じでしたが、最終話の眞悧の「マジで」で笑いが起こったり、CMの「ピングウェーブ」の本編との落差でやはり笑いが起こったり・・・(笑)。
  
このレポートは時間が少し経ってあやふやになった記憶を頼りに書いておりますので、正確性は保証しかねますが、以下にトークショーで印象に残った発言をピックアップします。発言の順序などもごちゃごちゃですが、大目に見てください。間違いや追加ポイント等あればじゃんじゃん直しますので、気がついた事があれば指摘してください。あ、それから自分は幾原ファンなので、レポートは幾原発言中心となっておりますのでご了承ください!w
 
トークショーからの発言ピックアップ
・池田:申し訳ありませんがスポンサーの関係上、最終回の間に入るCMは全部キングレコード関連です!(会場笑)
 
・幾原:池田プロデューサーは先日関西まで出張だった。
池田:そんなことまで言わなくていいのに!・・・最終回が入ったディスクを持ってMBSまで行ってきました。自分が寝過ごしてたら落ちてました(笑)。
 
・テーマは?と聞かれ
幾原:自分が言った事が絶対のように受け取られてしまうので言わない。インタビューされると必ず一番最初に「12年ぶりの新作ですが・・・」と言われるが、あまりそういう風に言われると沢尻エリカさんみたいに答えたくなってしまう。ベツニ〜!!!(会場から笑いと拍手)*1
 
・池田:次回作は12年も待たさないで欲しいですね!(会場拍手)
 
・幾原:大人の嫌らしい話になるけど、BD/DVD買ってください。それこそ次回作がなくなるので!
池田:すみません、宣伝という自分のやるべき事をやらせてしまいました(笑)。
 
・幾原:「制作」というと業界用語だから分からない人もいるかもしれないが、スケジュールのマネジメントが業務の「制作進行」という役職がある。制作の5人中4人が新人で、全くの素人。最初は絶対無理だと思った(笑)。しかし、初めての仕事だったからこそ、ある種の思い入れを持ってやってくれた。本当に彼らの頑張りがなければできなかった。頑張ってくれた彼らに拍手をお願いします。(会場拍手)
 
・幾原:最後まで画面のテンションが持ったのは、スタッフの頑張りのおかげ。
 
・1回目のトークショーの最後
幾原:木村良平くんはここでお別れと言う事なので、言わせてください。本当にありがとう。キャスティングを自分でしておいてあれだけど、他の三人が殆ど素人で、最初は無理かもしれないと思ったが、アフレコ現場で中心になってやってくれて助かった。
 
・幾原:13〜18話くらいが一番辛かった。シナリオができてないので、コンテと並行しながらの作業だった。あのへんで毎回自分がコンテを切っていたのはそのせい。
 
・幾原:ひとつ言っておきたい事がある。18話の多蕗の母親を見て、幾原はどんな悲惨な家庭環境で育ったんだと思う人がいるようだが、自分は母親とは仲が良い(会場笑)!Wikipediaに「母と確執がある」という記述があるが、全くそんな事はない。最近母が携帯メールを覚えて、「ペンギン見たよ」みたいな短いメールを送ってくるようになったが、そう思われると申し訳ないので否定させて欲しい。*2
 
・最終話の上映後
池田:「ピングウェーブ」すみませんでした(会場笑)。面白いと思って作ったんですが・・・。*3
 
・辻田:最終回の打ち合わせに入った時は絶望的な気持ちだった。絶対間に合わないと思った。
 
・辻田:実は今日、一番後ろで立って見ているスタッフが何人かいる。彼らにも拍手をお願いします。(会場拍手)
 
・辻田:長いこと業界にいるが、こんなに楽しい現場はめったいない。監督の次回作があればまた呼んでほしい。
 
・幾原:辻田さんはペケペケアニメーション(東映アニメーション)の一年先輩。当時はペケペケ動画(東映動画)という名前で、実はペケペケアニメーションになってからは行ったことがない。今考えると傲慢だったかもしれないが、入社時マネジメント(制作進行)をやってた頃から「自分は監督になる」と思っていた。その時辻田さんの仕事を見て、自分が監督になったら是非仕事を頼みたいと思っていた。『セーラームーンR』と『少女革命ウテナ』でもやってくれたので、次に機会があればぜひまた頼みたい。
 
・幾原:話とかは自分が中心となって考えているが、画面に出る細部のディテールのデザインは若いスタッフの仕事が殆ど。一世代くらい下の人達の力に支えられて作れた。そこには自分にはかなわないと思った新しい感性の仕事もあった。((このへん言い回しがどのような形だったか記憶がそうとう曖昧です・・・。
 ※追記:Twitterでnanamaruさんからこの時の監督の発言に関連するコメントを頂きましたので、該当部分をそのまま引用します。

 辻田さんも監督も幾度も幾度もスタッフの頑張りを讃えてほしいと言ったり、監督に至っては「作品のディティールは既に監督の手を離れ、完全にスタッフによるものです!」と断言してたのが印象的でした

 「ディティールは既に監督の手を離れ〜」の部分は監督が相当熱を入れて語っていた部分でした。nanamaruさんからは記憶が曖昧だったほかの部分に関しても情報を頂きました、ありがとうございました!
 
・幾原:最終話のコンテはなかなかできなかった。別の人と一緒に描いたのだが、どうも納得いく内容にならない。しかし「これでいいんだ!」と、そのスタッフを数時間かけて説得。その後他の女性スタッフに見せたら、これではダメと言われ、「だよね!」となった(会場笑)。やはり直すということになり、一緒にコンテ作業したスタッフに伝えると、「最後に何時間もやった打ち合わせはなんだったんだ・・・」と言ってた。*4
 
・幾原:今年は日本という国にとって本当に大変な年だった。3月に震災があり、その中でまさに作っていて、自分たちも非常に揺れた。本当にこれで良いのかと。「いや、だからこそやるべきだ」という意見もあった。
 個人的な話になるが、自分はもう父親よりも年上になってしまった。父親は自分よりも若い時に亡くなった。決して弱さを見せない鉄人のような人だった。社会に出てから、父親と同い年くらいの人が嫌いで、敵意を持っていた。「今思うと」という事で、当時はそんな分析していたわけではないが、「父親ではない」ないその年齢の男性が、自分を認めてくれるわけがないと思っていた。長い間、夢の中でも良いから父に会いたいと思っていた。ずっと、父が死んだ意味を考えていた。そしてある時気がついた。当たり前と思う人もいると思うが、死んだ事自体に意味はなくて、残された者が意味を見つけていくんだと気づいた。そうした個人的な感情も作品に反映されているが、そこについてきてくれたスタッフには感謝したい。
 
・最後のトークが終わり、登壇者が退場しようとする中
観客席の方から:監督、最後に一ついいですか!終わったばかりなのにこんなこと言うのもどうかと思いますが、次回作は12年も待たさないでください!(会場拍手)((詳細は声が小さくてよく聞こえませんでしたが、つっかえながらも熱の入ったメッセージを伝えていたと思います。自分は前の方の席だったので確認できませんでしたが、発言されたのは後ろの方で立っていたスタッフの方だったのかな。記憶が曖昧ですが、壇上からも「スタッフの方からのメッセージだった」というような事を言っていたような、なかったような・・・。 ※追記:やはりスタッフの方だったようです。
 
 
トークショーでは幾原監督が「何度も拍手させて申し訳ないけど、この作品は本当に頑張ってくれたスタッフ達のおかげ。もう一度スタッフに拍手を」というような事を言っていたのが印象的でした。本当に一丸となって作り上げてくれたんだなぁ。スタッフとキャストの皆様、素晴らしい作品を本当にありがとうございました。
 
今回はレポートということだったので、最終回の感想は明日にでもアップしたいと思います。最終回、文句なしで良かったです。書きたい事が色々あります。
 
 

*1:監督は今月のはじめ、NHKの番組「MAGネット」でピングドラム特集が放送された際にも同様の事をTwitterで言っていました。ログが流れてしまっているので元ツイートが見つからないのですが、「影響を受けた作品は何ですが?とか、これは何かの暗喩ですか?のような質問ばかりされたら沢尻エリカさんみたいに“別に”って言いたくなる」「なんてね」といった事を書かれていたと思います。確かにMAGネットでのインタビューは質問にキレがなく、視聴者としてはそんな事聞きたいんじゃないんだよ〜!とモヤモヤする部分があったんですが、監督もやはりそこはフラストレーションたまってたんだなと、非常に印象的な出来事でした。インタビュー冒頭では幾原監督が「幸せの価値は時代によって変わると思うんです〜」とか、作品を作るにあたっての自分の考えを答えていて良い感じなのに、直後のナレーションで「その一方で難解な表現こそが最大の魅力です」「幾原監督はなぜ難解な表現にこだわるのでしょう」という頭を抱えたくなるような質問をしてしまうという・・・。これに対して、「不思議ですよね。僕もなんでだろうと思うんですよ(笑)」「たまに同じような事を聞かれて、暗喩ですと答えることもあるけど、実際は結果的にそうなるという事が多い。写真でも実写でも、自分の楽しいものやウットリするものを切り取ろうとしてカメラを向ける。自分の場合もその気持にピュアでいようとした結果」というように答えているんですけど。綺麗な回答だと思いますが、腹の中では「ベツニ!(ツーン!」な気分だったんじゃないかなw

*2:確認してみたらWikipediaは既に修正済みとなってました。ずっと「要出典」となっていた情報のようですが、酷いw ピングドラムBD1巻のコメンタリーでも幾原監督は「母から野菜が送られてきた」とか言っていて、あれ?仲悪いんじゃなかったの?和解したのかな・・・?とか思ってたんですが、完全な事実無根だったとはw

*3:しゃがみ込んで頭を抱える池Pが可愛かったですw CMが流れた時と本編終了後に池Pが謝ってる時は客席から笑い声が上がってたし、個人的にはアリでしたよ!w

*4:そのスタッフの方も会場に来られていたらしく、壇上から「うなだれている人がいますねーw」と指をさされてましたw 名前を失念してしまったのでクレジットを確認してみましたが、古川知宏さんのことかな? ※追記:やはり古川さんの事だったようですw