ピングドラム9話感想(Part 2/4) さあ思い出して

「灰色の水曜日」が流れるシーンでのカットの移り変わりを細かく区切りながら振り返ってみる。(画像が直撮りの糞画質なのはご愛嬌)

(1) 「こいつをわすれちゃダメだよ」

 
(2) 林檎を落とす眞悧。

 
(3)正面を向いた陽毬の顔のアップ

自分の直上にある林檎を見つめている?
 
(4) 画面奥から手前に向かって落ちてくる林檎

陽毬の視点から見た林檎か?林檎の奥には紫っぽい霧がかかっている。
 
(5) 巨大な林檎を見る陽毬?

最初は画面奥に陽毬、手前に林檎があるだけかと思ったが、遠近感がうまく感じられない不思議なカットだ。やはり林檎の奥(画面右半分)に霧が見えるし、カメラを陽毬と林檎の後ろに構えていると考えるのが自然な気がする。先ほどのカット「(4)」が陽毬視点から映されたものだったとすると、これは陽毬と林檎を俯瞰してるのではなく、「林檎と向き合う陽毬」、「林檎を媒介として、林檎の向こう側の霧と向き合おうとしている陽毬」を映しているのではないか。
 
(6) 一瞬の暗転の後、画面一杯に送風用のファンが映る

一瞬の暗転が挟まっている事から、これは陽毬視点での回想なのではないかと思った。今まで回想をする際には「回想」というバンクっぽいカットがいちいち挟み込まれてきていたので、不意をつかれて最初は理解が追いつかなかった。
 
(7) 膝をかかえる子ども達のピクトグラム

 
(8) 先ほどより少し引いた所から映されるファン

 
(9) 少し引いた所から映される子ども達

 
(10) 落下する林檎を下から見たようなカット

カット「(3)」を思い返すと、これも陽毬視点であると考えることもできる。だとすると落下する陽毬の姿は映っていないものの、先ほどから出てくるファンや子ども達、次の「子どもブロイラー」のカットについても、陽毬から見た視点、または「そうした過去と向き合う陽毬」が居る空間を表していると考えられるのではないか。
 
(11) 一瞬の暗転の後、例の「こどもブロイラー」のカット

よく見ると「こどもブロイラー」の看板の下に、2階に上がるための階段のようなものが見える。
 
(12) 先ほどより少し長めの暗転の後、少年が林檎を手に持っているカット

 
(13) 「運命の果実を一緒に食べよう」「選んでくれてありがとう」

 
(14) 「そうだ、私にはとても大切な人がいた。彼が、私の運命の人だ」

画面右上をよくみると「こどもブロイラー」の看板のカラフルな文字の一部が見える。体育座りしてる子ども達が1階部分にいたとするなら、この二人は2階部分にいる模様。
 
(15) 1話と同じ、病室を見下ろすカット

1話にも同じカットがあったが、俯瞰に見えた前回とは違い、ゆっくりと落下してきた陽毬から見た視点に見える。
 
(16) 病室を見つめる陽毬

陽毬の後ろにモヤが見える。林檎を媒介として霧の中を通過してきた後だと解釈できる。
 
(17) 「生存戦略ー!」と叫びながら画面が下にパン

 
(18) 目覚め

 
そんなわけで、最初はビジュアルから受けたショックが大きかったおかげで、「こどもブロイラー空間」というのはなにか漠然とした観念的イメージだと思っていたのだが、実はそうではなく、あれは陽毬の記憶に基づいた、過去実際に陽毬が居たことのある施設のイメージであり、膝を抱えてこちらを見ている子ども達も含めて、陽毬の過去の記憶を映し出したイメージなのではないかというように考えるようになった。その記憶を思い起こすための媒介として、林檎が使われていると感じたわけだが、自分はなんとなく林檎に、マッチを擦って幻覚を見る『マッチ売りの少女』のような、おとぎ話における魔法のアイテム感を感じた。ベタだけど、ピングドラムって「KIGA APPLE」と書かれたあの林檎なのでは!?であるなら、「ピングドラムを探せ」と命令してくるプリクり様は、失った過去の記憶を取り戻そうとしているのだろうか。
 
1階で体育座りしている「何者にもなれない」子ども達とは違い、少年に「運命の果実」を一緒に食べる相手として選ばれ、「特別な存在」(=プリンセス?)となった陽毬。なんだか謎に満ちたエピソードが明らかになったわけだが、これが前世の記憶といった類のものでないのなら、陽毬は一度ではなく、二度記憶を失っている事になる(そらの孔分室での記憶と、以前施設で運命の人に選ばれたという記憶)。二度目のそらの孔分室についての記憶喪失はなんとなく納得できるが、一度目の記憶喪失はなぜ起こったのだろうか。幼い頃の出来事だった故、時とともに忘却してしまったのか。それとも…?
ついでに思ったことだが、眞悧により帽子を被せられ、赤い目のプリクリ様(プリンセス・オブ・ザ・クリスタル)状態に変身し、施設にいた時代の回想をへて、「生存戦略ー!」と叫ぶ場面までの場面のシームレスな繋がり方を見るに、陽毬の意識は「生存戦略ー!」と叫んだ所まで繋がっていたと考えた方が自然ではないだろうか。であるなら「プリクリ様=記憶をなくす前の状態に戻っている陽毬」という事になりそうな気がする。
(→次の記事へ続く)