痛さは強さだ!『キャプテンアース』9話感想

キャプテンアース9話のアカリとアイの対比がとても良かった。
まずAパートにおいて、アイが気弱で、「アイドルとしての自分」に不安と依存を併せ持っていることが示される。

普段は自分に自信が無く、内気なアイにとって、アイドルを演じることは苦痛であるのと同時に、他人に認めてもらうための限られた手段だったようだ。ライブを控えた楽屋で、重圧に耐えかねたアイはアイドルを辞めたいと漏らしていたが、辞めるかどうかであれほど悩むことからも、彼女のアイドルに対する切実な思いが見て取れる。
だがアイは、キルトガングとしての記憶を取り戻すのと同時に、アイドルに対するそれまでの想いを失ってしまう。


「観客のいないステージか……。」

「ちょっとさみしいけど、まあいいか。」

ライブをドタキャンするにあたって、かつてのアイなら「まあいいか」などとは口が裂けても言わなかっただろう。「まあいいか」のシーンは、カメラ位置が逆になる演出により、アイの思考が転換したことを一段と印象づけているように感じる。
 
アカリにとっての「魔法少女」は、アイにとって切実なものだった「アイドル」に近いものであると解釈できる。
アカリのハッキングスキルの習得が、幼くして父母と別離したことに起因しているらしいことは、3話にて、本人によりほのめかされている。


「なぜオイラは魔法少女になったのか?グローブ種子島基地指令の父親。そして、衛星基地天海道知事の母親。仕事しか眼中にない二人に見捨てられ、寂しい日々を送ってきたオイラは、ずーっとパソコンだけを友達に生きてきたのだ……。」

ダバダバ流れるBGMのおかげもありコミカルなシーンになっているが、語られている過去はそれなりに重い。アカリにとってハッカー魔法少女としてのスキルは、彼女をグローブ基地での新たな生活に導いたものであると同時に、辛い過去と結びつくものなのだ。
痛々しい過去でも、切り捨ててはいけないものはある。孤独を癒やす過程で獲得した力は、いわば彼女の生きてきた証であり、それを歪めたり、無かったことにすることは、現在の自己の否定に繋がるからだ。そんな切実な「魔法少女」を軽々しく茶化したアマラとモコは、「何が綺羅星だばかばかしい」イズム満点で、それに対してアカリがブチ切れるのも無理は無い。