こっそりピングドラム(第10)

 今回のゲストは色彩設定の辻田邦夫さん。最近だとキャシャーンsins四畳半神話大系での仕事が有名ですね。幾原作品では劇場版セーラームーンウテナでも色彩設定を担当されています。というわけで以下に辻田さんの発言で気になった部分を抜き出し。厳密な文字起こしでは全くないので正確性には期待しないでください。

 ピングドラムは幾原監督と話し合って、意図して原色を貴重にした画面にしてる。派手なほうが見栄えが良いからと。背景の絵は美術の人がやっている。自分はキャラの色とか服を担当してる。
 
 (ツイッターで辻田幾原の様子をみていると、ピングドラムは会議が長い?)
 
 そうですね、長いですね(笑)回数も多いです。
 
 (ピングドラムは女性スタッフが多い?)
 
 アニメ制作現場は基本むさいが、この現場では女性が多いので「毎日ヒゲを剃ろう、服を毎日変えよう」と気を使うようになる。監督が一番オシャレ!監督とは四半世紀の付き合い。第一印象からあまりかわってない。最初からあんな感じだった(笑)
東映動画に入ったときすぐに一緒に仕事をしたわけではないが、しばらくして佐藤順一監督の『悪魔くん』から次々と一緒に仕事するようになった。
 
 (幾原監督は髪型も昔からあれ?)
 
 一番最初は違ったかもしれないけど、途中からずっとあれ。『ウテナ』以来10年ぶりに仕事をしているが、全然印象がかわらないのが羨ましい。
 幾原監督が絵コンテを全部最初からやったのは『もーれつア太郎』で、その時まわりはみんな注目した。その回のゲストキャラが一回きりの登場なのに、演出が力入りすぎて、「盛り上げすぎだろ!」とツッコミが入ったほど。評判がすごくよかった。
 
 幾原君と仕事をすると楽しいですよ。僕等が経験から「こうだろう」って思ってる所に、インパクトでコーンと来るんですよね。その発想とかね、そういうのは誰にも真似できないです。一番説得力あるんですよ。あ、なるほど確かにその通りだと。「このキャラのこの色は確かにリズムで行くと確かにそうなんだけどさ、でもこういう風にしたほうが何か映えるし、来るよね」って言うと、確かにそうだと、皆それで納得していく。「ああなるほど、じゃあ、だったらそれを下敷きにしてこれをこうしようか」って展開が広がっていく。ピングドラムは基本的にそういう感じでやってます。
 
 だから色を決める作業にも、背景に対して夕方だから夕景的な色をのせるってときに僕が色を作って、演出さんと監督に見てもらうんですけど、「ここはもうちょっとこうしたほうが」ってときに、皆が「いやそれは・・・」となっても、「でもここはこういうことだからさ・・・」と説明されるとなんか納得する。そういう風に皆でやってますね。
 
 高倉家の美術は秋山健太郎、中村千恵子がやってる。ご飯や料理の色づけじは自分(辻田)がやってる。劇中でおいしそうといわれてるのにおいしそうにみえないのではNG。
 
 お話の構造的に楽しい、ペンギンが暴れている感じでいくんですけど、4話から「あ!」っという、「ヒキ」が作られていきます。次へ次へと、段々「実はサスペンスなんじゃないか?」っていう部分も出てくる。その分、メリハリで、遊ぶところは徹底的に遊んで。4話でこう、「パタパタ(手をクルクルとジェスチャーしながら)」をやってみたりね。(ミュージカル演出の事)。あれ大変だったんですよ、結構!僕は仕上げでキャラを一枚塗ればいいんですけど、あれを動かすのは撮影ですからね。どういう動きになるのかっていうのは全部、コンユーター上で、どういう機動にするかとか考えて。一枚の止め絵が「グルッ」とひっくり返ると表情変わってるとか、そういうやり方なんで。僕等がやってるものとしては一枚ずつ塗ればいいんで。それをどう回転させて、その位置がこうなってるのが良いとか、「キラキラキラッ」と光ってるのとかは、撮影さんが。だからもうみんな総合力ですよ。背景は緻密に完璧に描いてくれてるし、作画も頑張ってやってくれてる。
 
 (凄い綺麗ですよね。まるで劇場版みたいな(笑))
 
 まるで凄いスケジュールに余裕があるかのようにやってますよね!(笑)もうそれはそれは大変な騒ぎです(笑)皆さんはご存知だと思いますけど、状況は(笑)
 
 (そうですね(笑) 順調に大変なんですよね。)
 
 順調に着々とできていってます。
 
 (パタパタっていう所を最初に考えたのは幾原さんなんですか?)
 
 幾原君ですね。え、なにそれ!?っていう、演出の金子君(金子伸吾)もそうなんですが、「え!?」という感じですね(笑)「えー、そういうことなんだ」と、なんかいつの間にかそういう話に。「大変だよねこれ?」と、金子さんと。「どうする?」「やるしかないよねぇ」という(笑)「監督が言ってるからやらなきゃね」という。
  
 1クールものだと既に半分の話数だが、ピングドラムは2クールでこれから先があるわけだから、話の今後の展開に合わせて、色の方、画面も含めて、全部テンションにあわせてうねりを作ろうかなと。なかなか楽しいんですそれは。
 
 幾原監督の凄いところは、今までやってきたところからやろうとしない所。延長線上で解決しようとせず、「ならこうしようか」というのが凄い。とか言うと(監督から)「またまたまた〜。おじょうず言って〜!」と言われる(笑)
 (シャイだからw)
 
 バンクシーンのモデルは3DCGのデザインの人がやってくれたが、色は自分(辻田)。熊二体は中村祥子のデザインで、色のついたものがあった。
  
 (作品を作るうえで心がけていることは?)
 
 「のせすぎない」事。のせすぎないというのは、つくりこんでつくりこんでつくりこんでいくと、どっかでOKを出さないといけない。画面内でみせるにあたって、メリハリや見せ方は皆で最終的に考えるので、色だけ突出してやりすぎると浮いてしまう。ずーっとやってると「これだ!」となるが、自分の作業の次点で「これだ!」まで持っていかないよう加減をするようにしている。というのが僕の中で気をつけてるところ。
 
 (「辻田さんのピンク色が好きです」というコメントがきてます)
 
 ありがとうございます。ピンク好きですね。アニメ作るときにRGBなら綺麗でもなかなかCMYKの印刷物であの発色が出ないので難しい。画面の発色で印刷物に出にくいのがピンク。版権物の色のチェックもやっている。永遠の課題。「出力すると色違うじゃん!」という。
 
 (「デジタルとアナログの違いについて教えて欲しい}というコメントがきてます)
 
 アナログっていうのは、むか〜しのセルの事?
 
 (地デジとかそういう意味では?)
 
 あー。どっちも大変ですよ(笑)地デジになって何が凄いって、見えちゃうんですよね、いろんなものがね。見えなくてもいいのにこんなところ!と言うところまで見えすぎちゃう。そっちのほうですね。色の発色も違いますけど。隠しておきたいところまでバレちゃう。繰り返しみてくれると見えちゃうこともあるかと思うんですけど、できるだけナイショにしておいてください。こっちも気づいて後でこっそり直しますので(笑)
 
  (最後に一言)
 
 まさかこんな事になるとは思わなかったので。というのは、ここまで話題になるとは思わなかったので、嬉しい限りで。スタッフ一同嬉しいというより驚いるところがあるくらいです。みんな日々大変な中で、つぎへつぎへ、いろんなアイデア出して頑張ってます。期待してください。

 
 
 今回辻田さんの話では、アニメの集団作業ならではな話が聞けて面白かったですね。最終的には皆で作るものだから、自分の担当部分で煮詰めすぎないよう心がけている、という部分は聞いていて新鮮でした。あ、早速やらおんにもピングドラム本スレの反応をまとめたものが上がっていますね→(http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-3202.html
 というわけで、関西では早速今夜5話が放送されるわけですが、うらやましい限り。関東では明日の深夜に放送されますが、放送時間は「27:55〜28:25」と90分遅れになっているのでご注意を〜。・・・というか今調べて気付きましたが、来週は放送休止なんですね。ショック・・・。