『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』 1話と2話と最終話、中途半端の感想

1話を観終えた瞬間に、これは毎回勢いで感想書けるか!?と思ったものの、案外3話から書きたいことが無くなってしまったので(つまらなくなったとかいうわけではない)、1話を見終えた直後、2話を見終えた直後、最終話を見終えた直後に書いた三回分のメモ的感想をアップします。
なお本作『0080 ポケットの中の戦争』は全くの初見。スーパーロボット大戦などのゲームもやったことがないので、前情報は皆無と言って良い。
ただし「本作を観ていない」と言うと、「えーポケ戦観てないのが許されるのは小学生までよねーキャハハ」と笑う人が多いことと、「嘘だと言ってよバーニィ」というフレーズの存在を知ってたことは予備知識と言えば予備知識。ちなみにあのフレーズが『ポケ戦』のものと気づいたのは3話を見終えた時点。←鈍い。
というわけなので、1話、2話の感想に関してはその後の展開予想込みで書いている部分もある。
 
■1話
主人公の少年・アルのどこかぬけた感じ。
しかしぬけてるのはアルだけでなく、他の子供達にしてもそう。
突然のモビルスーツ戦により平和が吹き飛び、街が騒然とする中、子供達が実に落ち着いている。不可解なほど、と言って良い気がするが、この世界での子供目線としてはこれが自然、ということなのだろう。『ポニョ』において、未曾有の大洪水がまるでお祭りでもあるかのように描かれていたのを思い出す。
裏山に墜落したザクを追いかけるアル。「授業さぼるのかぁ?」という級友の問いかけに思わず吹き出しそうになった。目の前が突然戦場となっているにも関わらず、この後の授業のほうが彼らにとってはリアリティがあるようだ。
ではそのぬけている子供たちの中で、アルを物語の主人公たらしめているのは何か。それはおそらく彼の好奇心である。目の前を飛び去って行くザクを見つめ、アルはそれまで体験したことがないような何かを感じ取る。そして、彼はカメラが抱えたまま走りだす。

 
■2話
ジオン軍の兵士・バーニィと出会うアル。拳銃で威嚇されるにも関わらず、恐怖心など微塵も見せず、むしろ拳銃への興味に目を輝かせる。一悶着の後、バーニィがつけていたジオンの階級章を、自分のカメラと交換してしまう。交換時、テープだけを抜き取りカメラそのものは返却してくれるバーニィ
前回カメラが重要なガジェットに思えただけに、ここであっさり(というより進んで)交換に応じるアルに驚いた。前回、どこかぬけた思考の子供たちについて指摘したが、ここでも価値観の違いを見せつけられたような印象。アルにとってはその時一番輝いてみえるものがとにかく大事なのであって、興味の対象は簡単に転倒するようだ。
帰り道、画面にはけが人なども映し出される。そこにスポットを寄せれば一気に悲壮なドラマとなりそうだが、アルの目にそんなものは映らない。『ポケ戦』はあくまで子供の目線で紡がれる物語なのだ。*1
校長に呼び出され、テスト結果を母親にばらすと脅されるアル。うなだれる。同刻、バーニィも、ザクをおしゃかにした責任を問われたためか、呼び出しを食らっていた。叱責を覚悟していたバーニィだが、意外にもそこで伝えられたのは、特務部隊への配属命令だった。戸惑いがそのまま言動に表れるバーニィ。他の軍人の実務的な態度に比べどこか幼さの残るバーニィは、そんな所を早速皮肉られる。
バーニィはアルと出会った際、当初冷徹な態度を貫こうとした。しかし、無邪気な子供の振る舞いにつられ、結局最後は談笑するに至ってしまっていた。バーニィは大人である視聴者と、主人公の少年アルとの中間者的な存在として配置されているようだ。こうした構造は、作品のリリース媒体がOVA故な感じがする。
 
■最終話

「アル、泣くなよ。戦争はまたすぐ始まるって!今度はさ、もっともっと派手で、楽しくってでっかいやつだぜきっと」
「そうだよ。そしたらさ、薬莢なんかじゃなく、実弾も拾えるしさ。ひょっとすると、軍隊のレーション食えるかもしんないぜ!」

この台詞にあのBGMのかぶせ方!
「幼い」という事に対する眼差しは作品を通して感じていた部分なのだが、少年の日の喪失を胸に主人公が一歩大人になるというこの上ない王道が、あの最後の明るい台詞と音楽のおかげで数段ひねくれた感じに!
作中のアルの狭い視野は子供だから仕方がない部分もあるのだが、現実とのギャップに気づいてしまう際のダメージを思うと、身につまされるというか、途中からは先回りしてアルのことを可哀想がっていたのだが、こんなに晴れやかなエンディングが用意されていようとは。
バーニィは最後まで大人と子供の中間者のまま死んでいったのかな、という気はする。真っ当な思考であれば、本人の言っていた通り、あんな無茶な作戦に身を投じることなく、自首を選んだはずだ。

「俺が直接警察に自首しようかとも思ったんだが、なんていうか、そうするのは逃げるみたいに思えて。ここで戦うのをやめると、自分が自分でなくなるような……」

ガンダムパイロットであるクリスも、無茶をしているという点ではバーニィと同じだ。しかし、彼女は5話において、アルからいざという時にどうするかと聞かれ、なんとも大人な雰囲気で受け答えをしていた。

「逃げないと思うわね。怖いでしょうね。でも、怖いのには耐えられるけど、一人ぼっちになるのは耐えられないから。お母さんやお父さんやアル、それに友達。私の大切な人が皆死んじゃって、私だけが生きてるってこと。自分だけ逃げても、一人じゃ生きていけないもの、私」

その後クリスは、それも結局は自分のためにやっていることなのだから、例えいざという時に逃げる人がいたとしても、それはその人の生き方であるとアルを諭すのだが。
当初逃げるつもりでいたバーニィは結局逃げず、一人残って戦った。バーニィは確かに格好良かったけど、だからといってその行動が大人的であることとイコールでないのが良い。
エンディングが流れる中、アルはどんな大人になっていくのだろうかと色々考えてしまった。
 
ところで5話くらいからの「コロニーを救うためにはガンダムをぶっ壊すしかない」というアル達の置かれた立場が凄く面白かった。ガンダムを破壊するための作戦会議に、ガンダムを破壊するための材料集め。なんてワクワクするシチュエーションなんだ。はじめて作られた「ガンダム」のOVAであることをこれでもかと武器にしている。

*1:最終話まで見終えた後だと、子供の目線から抜け出る物語だったのかなという気がする。