こっちだって何千頭も殺したろ!:映画『ヒックとドラゴンン』感想

ヒックとドラゴン』観てまいりました。ドリームワークス作品はシュレック1作目ぶりの視聴。噂通りの傑作でございました。今夏のCGアニメ映画といえばピクサーの『トイ・ストーリー3』が興行的にも大活躍してますが、こちらの『ヒック』は完全なダークホース。評判が聞こえてこなければ間違いなくスルーしてた作品なので、映画館からの帰り道はこの作品を劇場で観れた幸運に大満足でした。以下ネタバレ感想。
まず主人公ヒックのナレーションをバックにしての導入部分が素晴らしく、ぐいぐい作品に引き込まれた。バイキングVSドラゴンの戦闘シーンも大迫力。ドラゴンに乗っての飛行シーンも最高。3Dならではの体感型シークエンスになっていた。観ていてすぐに『アバター』の壮大な飛行シーンを思い出したが、あちらとは趣向がやや異なっていて、ケレン味溢れる感じで観ていてドキドキワクワクした。
飛行シーンに限らずアバターっぽさを感じる部分は多かった。主人公が別世界に触れることで自分の進むべき道を見出すことや、よく知りもしない相手を敵として除外するのではなく、相手を知る努力をして共生していくべきなんだといったメッセージなど。しかし印象的だったのは冒頭の戦うバイキング達がかっちょいいものとして描かれていたこと。アバターでよく聞く批判として、「あまりにもベタベタな勧善懲悪モノになってしまっている」というのが挙げられますね。ナヴィ族がミソクソに爆撃されて悲壮感漂うシーンを見せ、「ホラ、アメリカってこんなに悪いことしてたんだぜ!もっと別の道模索しろやこのスットコドッコイ!」というどストレートな描写なんかも気に食わなかった人たちがいたようですし。それに対して『ヒック』が叩かれにくい構造になっているなと思えたのが、先に挙げた、バイキングのそれまでのマッチョな生き方を一度「かっちょいいもの」として描かれていたからです。「たしかドラゴン追っかけて斧を振り回すのも男のロマンとしてあるよね・・・だけどさぁ・・・・」という語り口になっていたこと。ここは上手いなーと。
ドラゴンのことをペットのように扱うシーンが多かったものの、主従関係として関係付けるのではなく、「相棒」という形で描いていった点も好感が持てた。最後のシーンで本当の意味での対等になり、支えあいながら新しい世界への扉を開くヒックとトゥースの姿には感動してしまった。上で一度本作を傑作と言ったけど、それだけではちょっと言いたりないな。エンタメでありながら確固たるメッセージを持った大傑作でした。