炎上の伊Netflix版『エヴァ』1年ぶりに配信再開

Netflixがイタリア語版『新世紀エヴァンゲリオン』の配信を約1年越しに再開しました(日本からは視聴不可)。配信再開にあたり、音声を新しいものに差し替えています。おそらく国内メディアで報じるところはほぼないと思うので、前回ブログ記事で触れた手前、一応ログとして残しておこうと思います。

 

この記事の「地味にイタリアでも大炎上」の項目参照

 

ざっくり経緯を振り返ると、

Netflixが世界配信権を獲得→2019年6月、各国で再翻訳&再アフレコ版を配信開始

・約20年間慣れ親しんだ旧バージョンが各国に存在しており、再翻訳やキャストの変更を「改悪」だと怒るファンも出現

・特にカヲルのセリフ「好きってことさ」が、英語版で「I love you.」から「I like you.」に変更されたことが一部の怒りを買った(この件は日本でもそれなりに話題に)

・その影でイタリア語版の再翻訳版も炎上。代表的な変更点は「使徒」を「Angelo(天使)」から「Apostolo(使徒)」にしたこと

・2019年6月にNetflixイタリアでの吹替版配信を中止(他言語版の配信は継続)

といった具合。客観的に見てそこそこの惨事です。

イタリアでは配信開始後、翻訳担当をしたGualtiero Cannarsi氏がキレたエヴァオタYouTuberたちと公開討論をするネット番組まで配信されて、混沌としたことになっていました(動画は削除済み)。

Cannarsi氏は旧翻訳版も担当していて、本人は当時は日本語力が及ばず、「使徒」を「Angelo(天使)」と訳したものの、今回はよりオリジナルを尊重した「Apostolo(使徒)」と訳したと主張。一方怒ったエヴァオタたちは「作中のモニタなどに英語で『Angel』との表記が確認できるのに、それをわざわざ別の言葉に置き換えるのはおかしい」といった批判を寄せていて、議論は平行線な印象を受けました(細かい文脈は追いきれていないので、ざっくりとした概要とご理解ください)。

Cannarsi氏はこの他にも劇中用語を、「初号機」を「unità 01(ゼロイチ号機)」から「unità prima(初号機)」に、「暴走」を「Berserk」から「stato di furia(激怒状態)」に変更するなどして叩かれていたもよう。

 

個人的には日本語版に寄せたくなった訳者の気持ちも、慣れ親しんだセリフを突然変えられて怒ったファンの気持も、どちらも一方的に間違っているとは言い切れないように感じましたが、とにかくNetflix側はファンの声を聞き入れ、新しい吹替版を製作すると約束。その再アフレコ版が約1年を経て、2020年7月6日(現地)についに配信されたわけです。

クレジットを確認したところ、セリフの翻訳担当者(Dialoghi italiani)はLaura Cosenza氏、吹替監督(Direzione del dopiaggio)はRoberto Stocchi氏が担当しており、Cannarsi氏は外された形のようです。

Netflixはツイートで「みなさんがこれから見るのは『Angelo』であり、これから聞くのは新しいイタリア語吹替版『新世紀エヴァンゲリオン』です」とわざわざアピールしていて、非常にお疲れ様感が漂っています。

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使徒」が「Angelo」になっている(Netflix ItaliaのTwitterより)

 

ちなみに、イタリアでは『新世紀エヴァンゲリオン』の中古DVD BOXが約10万円のプレミア価格になっていて、この1年、吹替版を安価に見る手段が存在しない状態でした。再アフレコ版の評価がどうなるかは分かりませんが、とにかくエヴァを気軽に楽しめる環境が海外でより広がったのは、素直に喜ばしいことです。