「ママ、ここに出てくる”イギリスの人”はなんでみんな金髪で目が青くて同じ肌の色なの?」と7歳の娘さんに言われ、「目ん玉飛び出そうになった」というお母さんのツイートが炎上しております。例によってインターネットのオタクたちにより、『映画けいおん!』は予告編を見ただけでもモブに多様な人種の人たちが登場するのに、適当なことを言うんじゃないと袋叩きにあっていました。
日本のアニメを観ていた長女(7歳)
— Izumi.jazz💜全米が震える酒豪 (@jazz0128) 2019年12月6日
アニメの中で学生たちがイギリス旅行🇬🇧をしているシーンを観て娘がふと
『ママ、ここに出てくる”イギリスの人”はなんでみんな金髪で目が青くて同じ肌の色なの?本当はみんな色んな髪色で目の色も違うんじゃ無いかな?』
と言われ
目ん玉飛び出そうになりました。
お母さんは当初のらりくらりと批判をかわそうとしていましたが、最終的に「日常会話の中でハッと子どもには色々と気づかされる事があるなと思い皆さんとシェアしたいと思いツイートしました」「熱狂的なファンの方々には不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と謝罪しています。
ツイート主はけいおんだって言ってるけど、けいおん劇場版に金髪碧眼の人ばかりが出てくるシーンなんて実際はほぼ無くて、どのカット見ても大抵髪色や人種問わず多様な人が描かれている(し、それは恐らく意識的に行われている) https://t.co/qNdo4TnRb6 pic.twitter.com/1fOYP3pCjC
— のいのい (@noi_springfield) 2019年12月8日
多種多様な人種が描かれていたのかもしれませんが、娘から観た視点では同じような人々に見えたようです。
— Izumi.jazz💜全米が震える酒豪 (@jazz0128) 2019年12月7日
作品を観て何を感じどの様な感想を抱くかはその人の自由だと思います。
作品を否定している訳ではありません。
皆さん沢山の反応を頂きありがとうございます。上記のツイートのアニメには実際全員が全く同じ容姿の「外国人」として100%描かれている訳ではなく、リアルな人々も少なからず描かれていました。熱狂的なファンの方々には不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。
— Izumi.jazz💜全米が震える酒豪 (@jazz0128) 2019年12月7日
でもこれ、謝罪させられるほどのことか? と思いました。理由は2つあります。
1つ目はシンプルで、バズった当初のツイートには「けいおん!」の作品名に一切言及がなかった点。本当に娘さんとの日常会話での気付きをツイートしただけのもので、特定の作品を貶めようとした投稿ではありませんでした。
2つ目の理由は、『映画けいおん!』がそもそもとても「変わった」作品であり、7歳の子どもがそうした「誤認」を起こしても不思議はないと思うからです。
今回の騒動を受け作品を見返してみましたが、劇中でセリフのある非白人キャラクターは1人だけ。それもイギリスの空港に到着し、唯が「サイドビジネス!(観光=サイトシーイングの言い間違い)」と言ったのに対し「サイドビジネス?」と聞き返す入管での一言だけです。
【修正(12月9日13時40分):当初「劇中でセリフのある黒人のキャラクターは1人だけ」と記載していましたが、元ツイートへの対応を考えると「黒人」よりも「非白人」という括りの方が適切だったため、修正しました】
また褐色系の肌のキャラクターがバストアップで映るのはこの入館のおじさんに加えて、寿司屋でコミカルに登場するインド系と思しきターバンを巻いたお兄さんくらいです(もし見落としていて他にもあれば教えてください)。1000カット以上あると思われる映画作品で、わずか2カットです。ツイートのお子さんが「誤認」したのは、このためではないかと個人的には思っています。
一方で、金髪でセリフのあるキャラも決して多くありません。ホテルの受け付け、寿司屋でライブを依頼してくる人、衣装に「ブラボー」と一言投げかけるおじさんの3人くらいです。セリフのある日本人ではないキャラクターとしてはタクシーの運転手もいますが、彼は金髪というよりは白髪でした。
『映画けいおん!』が「変わっている(ユニークである)」と思うのは、作品舞台がロンドンに移ってもなお、描かれるのがひたすらに「放課後ティータイムの5人の空間」に終始していると感じられる点です。海外まで行って、現地の人との交流がほとんどない。それはそれで学生の海外旅行のリアルなのかもしれないとも思いますし、このような空間を描く作品を認めることの方が、よほど多様性に対し進歩的だと思います。
という個人的な『映画けいおん!』観はさておき。確かにこの作品はモブで多様な人々を描き、街並みもリアルで美しいです。そこに意識が行き届かなかった7歳児に「画面をちゃんと見ろ!!!」とキレるのはある意味オタクとして正しい姿ではあります。事実誤認があれば、淡々と教えてあげれば良い。とはいえ作品を見た「感想」や「印象」まで否定する権利は誰にもないと思うのです。
追記その1(12月9日7時30分)
・子どもの発言や存在をダシに親の思想心情を代弁させる行為は、子どもの感想を踏みにじるのと同じくらいその子の人格を踏みにじる行為なので、そちらの筋からの批判についてどうこう言うつもりはありません。そうだったとしてもわざわざ吊し上げて炎上に追い込むのはどうかと思いますが。
・元ツイの「マックの女子高生」的胡散臭さについては悪魔の証明じみているので、その点は度外視で書いています。なお、本記事の告知ツイートに対し、「そもそも子どもが存在していることすら疑わしい」という引用RTもいただきましたが、「私(さめぱ)は一応元ツイ主の数日前のツイートにお子さんの後ろ姿の写真があるのを確認し、Google画像検索をしても同じものが出てこなかったので、オリジナルの画像である(=少なくともお子さんは存在するのだろう)と判断してブログを書いたのだが、子どもが存在しないというソースがどこかにあるの?」といった返信をしたところ、ツイ消しをされてしまいました。はなから「炎上させてやろう/炎上して当然」という態度で食って掛かる人が多すぎでは? と思う今日このごろです。
・本記事は炎上しているのを見て思ったことをつらつらと綴ったものですが、書き終えた後に、元ツイ主がお子さんと共に複数回『映画けいおん!』を見ていた旨をツイートしていたことを知りました。親は子にアニメの画面をきちんと見るよう教育していく義務があるので、そこは今後頑張ってほしいとは思います。
必要なのはツイートを吊し上げて親を謝罪に追い込むことではなく、子供にアニメの画面をきちんと見るよう伝えていく教育であり、親も作品ファンのお気持ちを害してしまったとか謝っている暇があったらその時間でもっとアニメを見るべきなのである。
— さめぱ (@samepacola) 2019年12月8日
追記その2(12月9日16時35分)
細かいのですが、ブコメにあるid:molytackさんのコメントについて。
id:molytackさんによるブコメ
追記「子供に代弁させる行為に対してどうこう言うつもりはありません」「炎上させるのはどうかと思う」嘘松認定に逆ギレかっこ悪いです
批判は歓迎なのですが、「子供に代弁させる行為に対してどうこう言うつもりはありません」と要約されてしまうと、私が追記で書いた内容と真逆の意味になってしまします。
さめぱによる記事での追記
子どもの発言や存在をダシに親の思想心情を代弁させる行為は、子どもの感想を踏みにじるのと同じくらいその子の人格を踏みにじる行為
にもかかわらず、ブコメの真逆に要約された内容がそれなりにスターを集めていて(現時点で61個)、「解せぬ……」となっています。主張していないことを「言った」と思われるのは心外なので、注記させていただきます。
追記その3(12月10日19時20分)
「追記その2」について、コメント欄でid: molytackさんより次のコメントをいただきました。
id: molytackさんのコメント
ご指摘いただいた通り、いま改めて自分のコメントを読み返すと意味不明です。
この件に首を突っ込むのはこれが初めてで、samepaさんが母親の関係者であり母親を擁護しているものと思い込んでいたようです。
同様に事実関係の把握が不十分なまま「母親を擁護する奴も同罪だ、吊し上げだ」と息巻くスターが集まったと思われます。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
もともと訂正か削除をしてもらえれば御の字で、謝罪まで求めていたわけではありませんでしたが、真摯な対応でしたので素直に受け取りたいと思います。
しかし私のことを「母親の関係者である」と思い込んだ勢いで「逆ギレかっこ悪い」と揶揄したコメントに、60名程度がブログ本文を精読することなく同調したのは、なかなか今のインターネットを反映した図式だなと感じました。
当該コメントにスターをつけた人ひとりひとりのIDを並べ、ブコメ主が謝罪した旨を知らせたい衝動に駆られましたが、それこそ本記事で批判している「吊し上げ」に近い発想ですし、逆恨みされるのが怖いので控えます。疲れました。
グレタを絶望のどん底に叩き落として嘲笑したい小説家だって、娘のけいおん感想をダシに素っ頓狂ツイートした保護者とそれにいいねをつけた1万5千人を土下座させたい表明で8000RT稼いだツイッタラーだって、前述ツイへの文句を垂れ流す自分だってミミズだってオケラだってアメンボだってみんなみんな pic.twitter.com/zMePcrTVAv
— さめぱ (@samepacola) 2019年12月9日