アニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の東京での上映が復活する。ポスターを見ると単に可愛い小動物アニメだと誤解しそうだが、擬人化能力を持った妖精・クロ(小黒)が街での生存をかけ人類と戦う、超能力バトル・スペクタクルである。
『NARUTO』の神作画回と『平成狸合戦ぽんぽこ』が合体した感じを思い浮かべてもらえると、なんとなく雰囲気が伝わるかなと思う。私は軽い気持ちで10月上旬に鑑賞してきたが、完璧に油断していたところにいきなり『天気の子』『プロメア』『海獣の子供』クラスで必見の作品をぶつけられ、上映中ずっと瀕死だった。
映像は序盤から見応えがあるのだが、終盤に差し掛かるにつれて『サマーウォーズ』のOZを彷彿とさせる空間でクソデカスケールなバトルが繰り広げられ、国内で公開されている他のどの大作映画にも見劣りしない迫力だったと断言できる。
今のところ都内での上映館は「ユジク阿佐ヶ谷」のみで、11月16日〜12月13日分のチケットを10月30日から予約受付開始。既に11月23日までのほとんどの回が完売で、12月分の一部の回でも売り切れが発生しているので、気になる人は早めの予約を。ちなみに京都の「出町座」でも10月26日から上映が行われている。
【追記(11月2日11時6分):「池袋HUMAXシネマ」での上映が11月16日から再開されると決定し、チケットの販売が始まっている。「ユジク阿佐ヶ谷」での上映は土日の回が12月まで全滅しているので、そちらを諦めていた人にも朗報。また「名古屋シネマテーク」での11月23日からの上映も決まった。
なお、作品公式Twitterが池袋HUMAXシネマでの上映再開を告知したのは11月2日10時過ぎ(劇場窓口のオープン時刻)。一方、劇場公式サイトによると、オンラインチケットは11月1日24時から既に買えていたらしい。微妙にドタバタぶりが伝わってくるが、人気を受けていろいろと動いてくれているのだろう。とにかく見れる劇場が増えて何より。】
東京での上映はこれが2回目。「池袋HUMAXシネマ」で9月20日〜9月29日に限定上映が行われ、好評を博したため、その後9月30日〜10月6日まで追加上映が行われた。
『羅小黒戦記』びっくりするほど面白かった。必見度『天気の子』『プロメア』級なので、未見の人はあらゆる手段を視野に(池袋はもう6日まで売り切れてしまってるので、京都遠征含めて)頑張ってください。終わる頃にはキャラがみんな大好きになってたし、こんな刺さり方すると思わなかった。 pic.twitter.com/7eQPSQxtre
— さめぱ (@samepacola) October 4, 2019
と、ここまで能力バトルの一面をプッシュしてきたが、本作の魅力は多岐にわたる。作品を序盤・中盤・終盤に分解すると、それぞれ『HUNTER×HUNTER』のハンター試験編とヨークシン編くらいやってることが違う……と言えばイメージし易いだろうか。
主人公のクロは猫形態では小動物として圧倒的に可愛く、少年に变化した際は細田守が思わずスタンディングオベーションを送りそうなほどケモショタとしてのポテンシャルを発揮する。クロ以外のキャラクターも敵味方問わず個性豊かで、作品が終わるころには世界観やキャラクターにすっかり魅了されていた。
物語面では、妖精の住処を破壊してきた人類との対決が発端となるが、環境問題云々を取っ掛かりに、多民族の共生について扱っていて、程よく現代的。迫力あるバトルを挟みつつ、小動物としてのクロを愛でるパートや、キャラ同士の掛け合いによるギャグ、ロードムービーとしての情緒などが同居する作品に仕上がっている。
また、本作は中国製作の作品だが、作画のスタイルや会話の間の取り方などがかなり日本のアニメに近く(もちろん独自性もある)、異様にすんなりと見られるのは特筆すべき点だ。
導入の展開と世界観説明が行き当たりばったりでバタ臭い印象だったけど、説明十分になる中盤からはひたすら良さしかなかった。間の取り方が日本のアニメっぽいんだけど、ところどころディズニーピクサーっぽい機敏な動きも織り交ぜるので新鮮だったな。オフビートなジト目ギャグがいちいちツボだった。
— さめぱ (@samepacola) October 4, 2019
中国といえば中央集権的な表現規制のイメージがどうしてもあるわけですけど、『羅小黒戦記』はテーマがモロに他民族との関係性に端を発する社会の分断や共生で、「全然やれてるやんけ」というヤックデカルチャーにまずやられる。
— さめぱ (@samepacola) October 4, 2019
なお、本作は1本で完結する映画として作られているが、実は前身として2011年から公開されているWebアニメ版が存在する。以下の動画はWebアニメ版1話のリメイク版で、2014年にリリースされたもの。
参考:中国のWEBアニメ 「羅小黒戦記」 第1~2話のリメイク版が登場 | 中国アニメブログ ちゃにめ!
Webアニメ版はもともと監督のMTJJ氏が個人制作に近い形で発表していたものらしく、劇場版に比べ日常色の強い作風となっている。当時公開されたコミカルで自虐的な予告編では、「製作費3000元!(約4万6000円)」の謳い文句が確認できる。劇場版では、ともすれば破綻しそうなほど要素がぎゅうぎゅう詰めになっていたが、Web版を含めると構想期間が長かったのがその要因なのかもしれない。
劇場版『羅小黒戦記』はとにかくスクリーン映えする作品なので、上映圏内に住んでいる人はもちろん、地元でやってないのだが! という人も遠征を視野に、ぜひ上映期間中に見てもらいたい。
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』中国での興行収入は3億629万元(約45億8000万円)。『名探偵コナン 紺青の拳』が2億2948万元(約34億3000万円)で結構すごい。『哪吒(ナタ)』は49億5026万元(約740億円)で文字通り桁違いだな…。早く日本で公開してほしい。 https://t.co/bqssUCZaqF pic.twitter.com/6kD5YwY29Y
— さめぱ (@samepacola) October 4, 2019
ちなみに中国ではCGアニメ映画の『哪吒(ナタ)』が今年とんでもないお化けヒットになっているので、そちらの国内上映にも期待。