『ガルム・ウォーズ』初日舞台挨拶行ってきた 押井監督次回作はIG制作のアニメ映画?

『ガルム・ウォーズ』をTOHOシネマズ六本木で観てきました。初日舞台挨拶付き。押井監督を初めて生で見れて嬉しかったです(厳密には『攻殻2.0』を劇場で観た際、直前の上映に押井監督が舞台挨拶で来ていて、廊下の遠くの方を歩いていくのを見たことはあった)。

エントランスにサイン入りポスターと作中に出てくる空母の模型が展示されていました。
 
本編は『アヴァロン』系統のこってり加工された映像美と、ファンタジーと言いつつSFな意匠をたっぷり含んだ内容で楽しませていただきました。上映終了後には押井守監督、日本語吹替版でカラ役を演じた朴璐美さん、キャッチコピーを担当した虚淵玄さんが登壇。中でも印象的だったのが以下の押井さんの言葉(記憶を頼りに書いてるので言い回しは不正確です)。

「今回はファンタジーという方法で世界がどう始まり、どう終わるのかということを描いた。自分の作品の中でも珍しい大上段に振りかぶった作品。それを実現させてくれたIGの石川とバンダイバンナム)の鵜之澤には感謝してます」

「鵜之澤」というのは旧『ガルム戦記』時代にプロジェクト凍結を押井監督に直々に言い渡した鵜之澤伸プロデューサーのこと。『ガルム・ウォーズ』としてプロジェクト再開を決定したのも鵜之澤さんでした。「石川」はプロダクションIG社長の石川光久さんです。普段二人に対して憎まれ口を叩いてばかりの押井監督だけに、17年越しの映画実現に際して真っすぐな謝辞を送っていて、大変ぐっときました。
 
石川社長は当初、『ガルム・ウォーズ』を作ることになった押井監督に対して「やるのはかまわないんだけど、我が社的には1円も出したくない」というスタンスだったそうなのですが、製作資金が尽き、作品が頓挫しそうになったときに大量のお金を投入する英断を下したそうす。という話を押井監督が舞台挨拶直前にLINE LIVEで行われた動画配信で語っていて、その辺も面白かったので以下に紹介します。動画の最後に乱入する石川社長の話も面白い。話を聞く限り、押井監督の次回作はアニメ映画になるっぽい? 実現すればアニメ作品としての新作は2008年の『スカイ・クロラ』ぶり。楽しみですね。
 

ガルム・ウォーズ 5/20公開!押井守×虚淵玄 喪われた物語 / LINE LIVE (動画の25分過ぎから)
 
押井 今でも覚えてるけど、石川は「(『ガルム・ウォーズ』を)やるのはかまわないんだけど、我が社的には1円も出したくない」って言ったのよね(笑)。最終的にはかなり出してくれたので、それだけは褒めても良いと思う。撮影中、やめるかってところまで3回くらい行ったから。これ以上予算の出処が無くて、どうすんだっていうさ。
 実写の怖さは日々お金が出て行くこと。ひと月待って、とかできないので。今中止にするのか、お金をどこかから工面するのか、今日中に決めなきゃいけないというときに石川が「やろう」っていうさ。だから結果的には相当なお金を出したわけだけど。よく(IGが)潰れなかったなって。仮払いとはいえ、普通こんだけ出してたら会社潰れるよなっていうような額だったから。それだけは大したもんだって言える。
 だからさ、博打と一緒なんだよ。どんどんコールして賭け金を上げていって、降りた側が負けちゃうわけだよ。映画ができなければゼロ。今やめればこれだけの被害で済むけど、出し続ければもしかしたら儲かるかもしれない。でも完成するまでにいくらかかるのか、正確には誰も分からない。それが監督の仕事と言えばそうかもしれないけど、そうは言っても銭勘定しながら映画は撮れないから。
 だから本当の大博打だったと思う。その意味で言えばこの映画が完成にこぎつけたのはお世辞でもなんでもなく、石川という男の英断というか決断というか……もしかしたら暴走だったかもしれないけど(笑)。ただそういう人間が最低一人か二人いないと映画ってできないんですよ。監督が暴走しようにも、ガソリンが無ければ走れないわけだから。だから世に言う「監督の暴走」っていうのは厳密には存在しない。それを許したプロデューサーがいるんだから。

 
配信の最後で石川さんも交えて一言ずつメッセージを、という流れになり石川社長も登場。当初出演予定はなかった石川社長、急遽呼ばれて登場を渋っていると押井監督から満面の笑みで「いいから来いって」と催促される。

「いいから来いって」と満面の笑みの押井さん

押井 自分の思いとしては『ガルム』が完成してから随分経ってるから、早く次の作品に向き合いたい……ということなんだけど。(ツンツン)」

石川社長を嬉しそうにツンツンする押井さん
 
石川 ある人に営業ってなんですかって聞いたら、「営業する人は気を使うのは大事だけど、遠慮はしちゃいけないんだ」って言われました。できない営業マンは気を使うし遠慮もしちゃう。そういう意味で押井さんとどうするかと言えば、これまで押井さんには相当気を使ったし、金も使ったしね、ただ遠慮しちゃいけないってことを『ガルム』で知ったんだよね。だから次で押井さんと組むときには、もう実写じゃなくてアニメーションを作って欲しいし、押井さんにアニメーションで映画を作ってもらうために今回の『ガルム』ではお金も最大限「気を使った」、ということを皆さんに伝えたいです。
 『ガルム』は最初は本当に押井さんの首を締めようかというくらい、夢にまで出てきたんだけど。まあでも段々出てくると味になるし。最終的に鈴木敏夫さんも企画に参加してくれて。どういう形でも、次に押井さんのこれだっていうアニメーションを皆さんにお届けすることがこの作品にとっても、皆さんにとっても、押井さんにとってもね、そして虚淵さんにとってもね!*1 ということをこの場で契約処理させてもらって……。
石井 ちょうど視聴者も65万人になりましたので、65万人の視聴者が証人になると。
虚淵 おっかないな(笑)。

 
というわけで押井監督、次は是非ひさびさにアニメを撮ってください。最近の実写作品だと『東京無国籍少女』などは結構楽しめたんですが、やはりそろそろ押井さんのアニメ作品が観たいです。

*1:石川社長、最近IGの企画(非押井監督作らしい)に虚淵さんを誘っていたらしく、それが頓挫(?)したばかりだったらしく、やけに虚淵さんに絡みたがる。