『エヴァ』テレビ版感想:8話 異色回その1

 
エヴァ8話「アスカ、来日」
 
・「アスカ、来日」のタイトルについて改めて調べてみたら、「「strike」は、「攻撃する」と「(えさに食いついた後で釣糸を張って)魚を鉤針にひっかける」をかけている。また、アメリカでは台風上陸時に「(女性名)strikes!」と言い回されるが、それともかけている。 」新世紀エヴァンゲリオン - Wikipedia
と書かれていた。台風とかけていることは知ってたけど、釣りとひっかけているというのは知らなかった。

・ケンスケ「あああ!!すごいすごいすごいすごいすごいすごーい!!凄すぎるぅうう!!!男だったら涙をながすべき状況だねこれは!ああああすごいすごいすごいすごいすごぉぉおおいぃ!!」


動ポジ演出。空母の上でアメリカ海軍の兄ちゃんたちが背景にいるので、初見時はスト2のガイルステージを連想したのを覚えてる。

・この回はどのキャラも活き活きしていて楽しい。どこかふてぶてしいシンジとか。3、4話で鬱々としていた時期から随分持ち直したな。今回のアスカ登場回と次のユニゾン回は『ナディア』の島編でも猛威を振るった樋口真嗣がコンテ。おかげで明るめなシンジのキャラは1話とも違った感じ。

・カジの登場に取り乱すミサトがひたすら可愛い。


・幼少時に観た2号機のこのビジュアルは鮮烈だった。ロボットなのに水に浮かべて輸送している所を斬新に感じたのだと思うけど。僕は何故か『紅の豚』のポルコの飛行機が大好きだったのだが、そちらとどこかダブって見えたのかもしれない。


・僕はとにかくテレビ版のアスカが大好きなのだが、どちらかというとシリーズ後半でメンヘラ気質なところが炙りだされてきてからの方が好きなので、この時点では勝ち気で面倒臭い性格だなーという印象が強い。「チャーンス」とか確かに可愛いんだけども。
・冷静に考えるとアスカがシンジを同乗させる意味が分からない。4話のシャムシエルとの戦いでお話の都合上トウジとケンスケにエヴァに乗ってもらっていたが、今回もそうした強引さを感じる。アスカが「シンジに自分の活躍を特等席で見せつけるため」とか言っているので、最低限の言い訳はOK。結果的に名エピソードになっているし、これも面白さ第一主義が上手くいっている一例だろう。

「キャー!覗かないでよエッチ!なんで男の子ってああバカでスケベなのかしら!」
1話から「我慢なさい男の子でしょ」とミサトにチクチク言われていたシンジ。シリーズを通して性別というのはひとつ重要なモチーフとなっている……ことは大分忘れていたが、先程たまたま読んだ「アニメスタイル」のエヴァ8話解説を読んでいて思い出した。→WEBアニメスタイル_COLUMN
「アスカ、行くわよ…。」と、自分に言い聞かせるように独り言。今回は明るいエピソードだが、アスカが彼女なりの理由でプレッシャーを感じながらパイロットをやってるのはこの時点で伺える。
・シンジの「バ、バウムクーヘン」は樋口回でないと絶対言わない感があるw 先ほどリンクで紹介した「アニメスタイル」のコラムでも「この回ではキャラクターの印象が随分違う。勿論、庵野監督にとってこのくらいの違いは計算の内だろう。むしろ、作り手によるキャラ描写の違いを愉しむところだ。」と書かれていた。
・堅物っぽかった艦長とミサトさんが小指を立てながらマイクを握ってるのが面白い。ミサトさんなんかはやはり樋口回意外では小指を立てなそうw


トウジ「まるで釣りやな」ミサト「釣り…?そう、釣りだわ!!」
この「そう、◯◯だ!」といって問題を解決させてしまうテンプレ展開。これを指す作劇用語を昔どこかで読んだ記憶があるのだが、思い出せずに何年も悶々としている。
追記(12月24日):コメント欄にて、それは「カルタプロット」ではないかとの情報を頂きました。そうだ!カルタプロットだ!!
共にご紹介頂いたWEBアニメスタイルのコラムには次のようにあります。

アニメ様の七転八起 第43回 エヴァ雑記「第拾話 マグマダイバー」
 『ゲキガンガー3』の仕事をやっている頃、スタッフ間で「カルタプロット」という言葉が使われていた。昔の子供向け番組にあった物語のパターンの事だ。まず、話の前半で視聴者に印象づけるような何かがあり、それをきっかけにして、後半で戦いに勝利するというものだ。きっかけになるものは、ロボットアニメなら戦闘と関係ないものの方が効果的だ。例えば、TV番組にヨーヨー名人が登場し、主人公達がその技に感心する。そして、強敵が現れて主人公達が苦戦。どうすればこの危機を乗り越えられるのか。「そうだ。あれだ! ヨーヨーだ!」。主人公側の登場人物の1人が、ヨーヨーにヒントを得た必殺技を考案し、逆転勝利する。著書「TVアニメ青春記」(実業之日本社)でも話題にされているが、ベテラン脚本家の辻真先は『勇者ライディーン』で「1月1週目に放映される話なので、季節感のある話を」とオーダーされて、カルタをヒントにして主人公が勝つ話を書いている。その逸話に因んで、僕達は上記の定番ストーリーをカルタプロットと呼んでいたのだ。

そうそうこれです!!長年のモヤモヤが晴れました!情報をくださったmakさん本当にありがとうございます!!それにしてもアニスタのコラムを読み返さなかったことがこんな形で裏目に出るとはw
なお、アニスタの小黒氏によれば「アスカ来日」での「そう、釣りだわ!」は前半で釣りについてのネタ振りが無いのでカルタプロットとは呼べないのだそうで。対して10話の「マグマダイバー」の「熱膨張」は「ほぼ完璧なカルタプロット」と賞賛されていました。カルタプロットにもできの良し悪しがあるわけですねw
 
・これまで使徒の「ATフィールド」は非常に強固なものとして描かれているのに、口をこじ開けた程度で通常兵器でも通用してしまうのかという。この辺のフレキシブルさ。

・「水中戦闘を考慮すべきだった」とテンション低めなミサトに、「あら珍しい。反省?」と、からかうリツコ。基本的にあまり反省するタイプではないのは4話までで分かってきていたが、周囲の親しい人間はそれを汲んだ上で付き合っているのだよな。

ちなみにここでミサトのテンションが低いのは反省しているからではなく、カジのことで憂鬱になっているためw(直後にアスカからカジのことを聞かれ、声を荒げている)

・カジがゲンドウの前を横切り、ゲンドウが「最初の人間、アダムだよ…(ニヤリ)」と言うシーン。何度見ても格好良い。そういえば新劇場版『破』では「アダムだよ」が「ネブカドネザルの鍵だ(ニヤリ)」となっていた。
謎に関しては既にまとまったものがゴマンとあるので僕の感想ではあまり触れないが、テレビシリーズ〜旧劇場版に関しては以下のファンメイドの動画が面白くまとまっている。この動画シリーズ、次回作では新劇場版を扱うようで楽しみにしている。

・エンディングがアスカを意識して赤みがかった色に。歌がみやむーバージョンになってることは覚えていたが、色が変わっていることはすっかり忘れていた。

 
・次回予告、「展開される大掛かりな水際作戦。エヴァ二体による初の連携攻撃だったが、心がてんでバラバラのアスカとシンジは、使徒にコテンパンにのされてしまう。ミサトは、二人の完璧なユニゾンを目指し、一計を講じた。人々の存亡をかけた六日間のドラマが始まる。次回、「瞬間、心、重ねて」。さーてこの次も、サービスサービスぅ!」
予告では「人類の存亡をかけた」とか言ってるけど、全く悲壮感の漂わない雰囲気が最高ですね。
 
・前回と今回、地味に(?)脚本に榎戸さんが参加している(他にもチラホラ参加している)。不勉強なので榎戸さんの脚本がテレビシリーズにどのように反映されていたかはぼんやりとしか知らない…。確か脚本は二年くらい先行して作られていて、それを元にコンテ段階でかなりいじられていたはずだが。スケジュールの問題だったか何かで榎戸さんは途中から抜けてしまうんだよな。
 
アニメスタイルのコラムを読んでしまうとピンポイントで感想内容を引きずられてしまう気がするので、シリーズを見終えるまでは読み返すのは控えようかな。読んだことが無いひとは超面白いのでオススメです。1話のコラム→WEBアニメスタイル_COLUMN
 
というわけで次回のユニゾン回につづく。
・次回感想→『エヴァ』テレビ版感想:9話 異色回その2?
・全話感想もくじ→『エヴァ』テレビ版〜旧劇場版/『新劇場版:Q』全感想目次