『神秘の法』感想:『まどかマギカ』に興行収入で勝つだけはある面白さだった(迫真)

今回も過去の作品に恥じぬ素晴らしい面白さだった。


参考
『ファイナル・ジャッジメント』を100倍楽しむ方法 - さめたパスタとぬるいコーラ
『ファイナル・ジャッジメント』サイコー!(布教) - さめたパスタとぬるいコーラ


『ファイナル・ジャッジメント』に続き、今回も公開初日に信者の方々で満員の映画館に観にいったが、相変わらず「笑ってはいけない」空気が充満していて大変刺激的な空間であった。
少し残念だったのが、『ファイナル・ジャッジメント』のときは映画館前に駆けつけていた幸福実現党の選挙演説の人が今回は来ていなかったことだ。しかし前作が幸福実現党が選挙で惨敗したトラウマを払拭することが隠れたテーマであったのに対し、今作ではそうした点には触れられないため、実際に演説に来ていたとしても、前回ほど本編をハイパーリアルなものに感じさせる効果は得られなかったかもしれない。
展開の詳細な解説は既に破壊屋さんなどが記事をアップされているのでそちらに譲るとして、僕は素直に面白かった、笑えた部分を挙げていこうかと思う。

参考:『神秘の法』は観るだけでリューマチが治る奇跡の映画 | 破壊屋

 
本作は『仏陀再誕』に比べるとアニメーションの野暮ったい感じが無くなっていて、ソツのない内容となっている。特にCG表現の進歩は目覚しいもので、本作にはCGで描かれたシェンロンみたいな悪龍と、キングギドラみたいな味方(ヤマタノオロチ)が出てくるのだが、これらは非常に迫力がある。特にヤマタノオロチが雲のような質感から金色のキングギドラに変身する場面などはかなり凝っていて見応えがあった。それだけに、終盤で突如PS1を彷彿とさせるレベルのCGが頻出するパートはインパクト絶大だった。クライマックスで『鋼の錬金術師シャンバラを征く者』の鎧軍団のような悪の軍団が出てくるのだが、これに対抗するため主人公が召喚する仲間の軍団がそれまでのCGのクオリティと凄い落差で笑えるのだ。

上映中ずっと笑いを我慢していたのだが、このシーンはあまりの不意打ちに吹き出してしまった。また、CGの質感が『仏陀再誕』のクライマックス(大津波が都市を襲うシーンや、大量の天使が降臨するシーン)に非常に近かったので、古い友人に再開したような不思議な安堵感も感じた。
過去作との共通点でいえば、今作でも『ファイナル・ジャッジメント』同様、主人公が大きな木の下で座禅を組み、聖典を読みながら悟りを開くシーンがある。一見唐突にも思えるシークエンスだが、過去作からの積み重ねもあり、このシーンからはアニメでいう変身バンクのような安定感すら感じられた。
 
お話としては地球人と宇宙人と神々の戦いという壮絶なものとなっているのだが、上記ヘッポコCGに前後してシェンロンとキングギドラが宇宙に飛び立ち、熱光線を放ちながらバトルを繰り広げる様には、あまりのスケールに爆笑した。怪獣映画さながらのインパクトで脳がシェイクされる感覚だった。
他にも笑える要素として、主人公が名乗る際に毎回「ショウ、シシマルショウだ!」と、独得な台詞回しなことが挙げられる(しかもこの台詞は二〜三回出てくる)。主人公のキャラが面白いのはこの点だけではない。彼は仏陀の生まれ変わりであり、全人類を悪の帝国から守る救世主であるとされているのだが、そんな尊いお方であるにも関わらず、敵の基地に新入する際、彼はグレンラガン』終盤のグレン団のコスチュームみたいなものを着ていたりするのだ。あまりに自然な着こなしに、ここでも吹き出しそうになった。


主人公は突然このような宇宙人の戦闘服を着たりする。この戦闘服には『攻殻機動隊』でいう光学迷彩のような機能がついているのだが、「SAC」シリーズのように突然透明になるのではなく、初代劇場版のように透明なビニールのようなもので身体を覆うギミックが用いられる。オマージュなのかなんなのかは分からないが、非常に露骨で笑える。

 
他にも桜が咲き乱れる丘の上で脈絡なく女神が歌を歌い出す場面ではゲド戦記』の「テルーの歌」を彷彿とさせていたし、主人公が魔法のステッキを振り回して戦う場面などでは同時期公開の『劇場版まどかマギカ』に対する明確なライバル意識を感じた。こうしたジブリ超えや社会現象化を狙う志の高さが、結果として興行収入などにも現れているのかもしれない。

1位 アウトレイジ ビヨンド
2位 踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
3位 ツナグ
4位 神秘の法 The Mystical Laws
5位 バイオハザード? リトリビューション
6位 ロラックスおじさんの秘密の種
7位 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語
8位 ボーン・レガシー
9位 新しい靴を買わなくちゃ
10位 ハンガー・ゲーム
 
4位は『神秘の法 The Mystical Laws』。全国208スクリーンで公開され、土日成績は動員12万4423人、興収1億5925万8000円。祝日を含むオープニング3日間成績は動員17万6916人、興収2億2617万6900円。

最新日本映画興行成績ランキング | 映画-Movie Walker


突然この女神が歌い出す。ちなみにキングギドラを操る力を持っているのもこのひと。


最後は魔法のステッキで戦う。

 
ほかにも宇宙人の母星の描写がやたらSFチックだったり、中国軍の侵略がギアスっぽかったり、ライバルキャラがガンダムっぽく仮面をしていたり、主人公が覚醒するシーンで光の巨人が出てきたり・・・見所は尽きない。


SFちっく。


 

ギアスっぽい。上が『神秘の法』、下が『ギアス』。


仮面の敵。ちなみに現在僕のiPad待ち受けはコイツになってます。


 

完 全 に 一 致

 
個人的に唯一不満だったのは、地球破壊ミサイルの発射シーンが描かれなかった点だ。途中、CGで描かれた敵空軍の戦闘機が『王立宇宙軍』っぽい墜落のしかたをしたので、自分としてはミサイルの発射シーンが大スペクタクルとして描かれるはずと、淡い期待を寄せてしまったのだ。ミサイルのデザインが無断に凝っていて格好良かったのも、結果的に発射シーンの不在による肩透かし感の増大に繋がってしまっていて残念だった。
CGと言えば、本作のカーチェイスシーンを思い出した。あのシークエンスは車のCGのデキも上々だったし、とても良くできていた。『ファイナル・ジャッジメント』の牧歌的なカーチェイスもあれはあれで味わい深かったが、スピード感ではこちらが頭ひとつふたつ抜けていた。
 
というわけで、平凡な日常に飽き飽きしている人に是非おすすめしたい一作である。
近隣国の脅威に警鐘を鳴らしまくるという主題は『ファイナル・ジャッジメント』と共通するが、絵的には怪獣や宇宙人や神々などが出てきている分、格段にスケールアップしている。舞台も日本や中国にとどまらず、どこのスペースオペラだよと言いたくなるような惑星や宇宙船などが出てくるので、そんじょそこらのアニメ映画では味わえない満足感が得られること請け合いだ。観ていてこれほどテンションが上がる作品はそうそう無いと断言できる。
これにて『ファイナル・ジャッジメント』に端を発する「近未来予言映画」シリーズは一旦終了となるようだが、次回作が公開されるのはまた数年後となるのだろうか。私的には次のアニメ映画に是非、大川宏洋の再登板を期待したいのだが。