「特撮博物館」会見における日テレ「ZIP!」記者の蛮行

昨日も「特撮博物館」の会見模様について触れました(庵野さん「特撮博物館」への抱負 - さめたパスタとぬるいコーラ)が、終始良い感じで進行していたにも関わらず、実は質疑応答コーナーで軽い放送事故がありました。
戦犯は日本テレビの情報番組「ZIP!」の記者。
樋口監督による短編特撮映画(ジブリ短編で“巨神兵”を実写映画化!庵野秀明館長「特撮博物館」を開催!! | マイナビニュース)について、
「なぜ巨神兵を映画に出したのか」
という質問でした。「東京を舞台に巨神兵を登場させたときに生じる違和感」について聞くのも結構ですが、この記者ぶっちゃけ庵野さんがナウシカ巨神兵パートの原画をやったという世間一般の常識すら知らずに質問してるよね。その時点で圧倒的にギルティ。さらに言葉遣いが酷い。エヴァブーム最盛期にこんな模様が放送されようものなら原理主義者達から何をされていたか、想像しただけで恐ろしくなります。ニコニコ朗らか皆が幸せになれる時代でよかったね。今やシンジくんすらまっとうにリア充してる時代だからね。だけど僕はリア充じゃないのでこの記者の蛮行をネチネチと後世に残していきたいと思います。
 
日テレ「ZIP!」記者の蛮行3ポイント

・所属と名前を明かした上で質問しろと司会が前置きしていたにも関わらず、名乗らずに質問開始。その点を注意され、「日本テレビの朝の番組ZIPです」としか答えず、やはり名乗らない。
・事前の取材を全くせずに質問。
・喋り方がちゃらんぽらんで記者会見の場にそぐわない。

原理主義者には3ストライク制などという生やさしい概念は通用しないので、本来ひとつでも抵触したら厳罰です。三日三晩監禁されてオタク洗脳教育を施されるところしょう。この記者は時代に感謝したほうが良いでしょうね。
というわけで以下に質疑応答コーナーの模様を書き起こしました。ZIP記者は二番目に質問されてます。
 

司会 これより展覧会に関する質疑応答の時間とさせて頂きます。ご質問はこの展覧会に関することに限らせて頂きます。今日はせっかくのバーチャル会見ということなので、ネットで参加している皆さんも是非質問をお寄せください。ではご質問のあるかた挙手のほうお願いします。……では媒体名とお名前を仰った上でお願いします。
 
共同通信記者 共同通信の井上と申しますが、庵野監督に伺いたいんですけども。
 
庵野 はい。
 
共同通信記者 コピーになっている「エヴァの原点は、ウルトラマン巨神兵」ということについて、もう少し詳しく教えて頂けますでしょうか。
 
庵野 なんでも人のせいにするのはよくない*1と思いますけど、これも鈴木さんのコピーです(会場笑い)。僕というよりは鈴木さんに聞いたほうが正しいんじゃないかと。これは鈴木さんの思い込みですからね!
 
鈴木 いやあのね、これは率直に申し上げます。僕は特撮展と聞いたときにね、ある一定のファンがいるのはよく分かってましたけれど、なかなかお客さんに来てもらって色々成立させるの難しいんで、やはり宣伝コピーは強烈に行こうと。これでこういうことを考えました!本人も納得してくれました!
 
庵野 あながち間違いではないので大丈夫だと思います(笑)。
 
司会 よろしいですか?はい、ではもうひとつくらいは質問を受けられるかもしれません。質問、ございませんか。……あ、無いですね。(鈴木さんの笑い声)みなさんもうすっかりご納得されたようなお顔をされておりますので…
 
庵野 あ、そちらに。
 
司会 いらっしゃいました!じゃあそちらにマイクをお持ちします。
 
??? これっ、数多くいるキャラクターの中から
 
司会 団体名とお名前をお願いします。
 
ZIP記者 ああごめんなさい、はい、日本テレビの朝の番組「ZIP!」ですおねがいしまーす。ええっとこの、巨神兵なんですけどね。数多くいるそういった、なんかデカイキャラクターの中から、なぜこれ巨神兵なのかなぁって、なんですぐパァーッ!ってすぐ出てきたのかなぁって。
 
庵野 もう単純にジブリですから。せっかく自分でやるんだったらそれはもう巨神兵でしょう。このチャンスしかないと思いますね多分ね。あとまあ、インパクトもあるし。宮さんさえOK出してくれればこれがベストかなと思いますね。
 
司会 はい
 
ZIP記者 あとこれ、ごめんなさいえーっと。凄い僕巨神兵っていうのは、なんかその、ナウシカの世界に凄い合ったものだ…まあそれを見ているからそうなるんですけど必然的に。それをこの東京の街に出てくる違和感っていうのはどういうふうに克服するんですかね、したんですかね。
 
庵野 その違和感が良いかなと。答えになんないですかね。
 
ZIP記者 なってないかもしれないですね(笑)。
 
庵野 ああ、となると難しいな。うーん…、どうまとめりゃ良いかな(樋口さんの方を見ながら)。
 
樋口 「違和感」が「怖い」みたいな。「違和感」が「面白い」みたいな。むしろそこで、こんなものがここにいるはずがないっていうものが目の前に現れることが、実は、なんだろうな。はじめてゴジラを見たときやはじめてウルトラマンを見たときの恐怖やインパクトと同じだと思うんですよね。いまそれに代わるものとして何が良いだろうというときに、まあ他の理由も色々あるんですけど、まあ書類の処理上の問題も含めてですけど、やはり一番大きいのは…。しかも実は映画の中ではオープニングでしか出てこない。庵野さんが手がけた部分は腐ってましたから。腐って溶けるところだったんで、あれが二本の脚で立って、きちんと働いている姿っていうのは、多分映像化するのははじめてなんじゃないかなと。そこはもうきちんとやりたかったというのが。だから違和感からはじまるけど、その違和感というのはあくまでも映像のクオリティとしての違和感ではなくて、脳に入ってくる違和感という意味で好意的に捉えてますね。
 
ZIP記者 ありがとうざす、あとこれ東京ってのはこれ、何年くらいの東京なんですか?
 
樋口 いや、いまです。
 
ZIP記者 ああ、いま現代。
 
樋口 はい。
 
ZIP 記者 ああ、ありがとうございます。
 
樋口 色々やろうとしたんですけど、結局いまになりましたね。
 
ZIP記者 ありがとうございまーす。
 
司会 いまですね、アバターの皆さんからも質問がありまして、「特撮初体験はいつですか?」というのがあったんですけど、庵野館長いつだったんですか?
 
庵野 いつですかね。テレビだと『ウルトラQ』ですかね。『Q』あたりかなと思うんですけど。
 
司会 何年くらいになりますか?
 
庵野 あれ65年くらい…?
 
樋口 66年ですね。
 
庵野 そのあたりだと思いますね。あと怪獣映画何か見たかもしれないですけど、
 
樋口 (会場の人にジェスチャーで年代を聞きながら)『Q』が65年か。
 
庵野 『ウルトラマン』が66だっけ。まあそのあたり。

 

昨日は見ていて樋口さんのフォローが見事でしびれました。
ZIPの記者は批評的な視点から「東京を舞台に巨神兵を登場させたときに生じる違和感」について質問するのはかまわないんですが、それはやはり最低限の前提知識を持った上でしてほしいですよ。「なぜ巨神兵なのか」という質問に、庵野さんは「単純にジブリですから。せっかく自分でやるんだったらそれはもう巨神兵でしょう。このチャンスしかないと思いますね」と、これ以上なく明快に答えてくれているわけです。普通はこの返答の時点で、やはり庵野さんは巨神兵と浅からぬ仲なのだなと、巨神兵をモチーフとする正当化については納得するじゃないですか。なのにこの記者は庵野さんと巨神兵の関係を全く知らないから、「巨神兵である必然性」について的外れにしつこく質問してしまう。しかも妙に不遜な態度で。しかも、元々知らなかったとしても、会見中の話を聞いていれば庵野さんが過去にいくつかのジブリ作品に関わってたことくらいは分かるはずなんですけどね。
昨日の会見会場はニコファーレだったので、ニコ生で書き込まれたコメントは実際の会場内にも映しだされ、ご覧の有様w

 
僕は寝坊して見れませんでしたが、今朝放送された「ZIP!」では今夜の「金曜ロードショー」で『ナウシカ』が放送されることと、樋口監督による短編特撮の映像が少しだけ見れることが予告されたらしいです。どうせなら録画して確認すればよかったな。というか、ジブリと関係が深い日テレの番組なんですから、もう少しまともな記者を送れば良いのに。なんにせよ、会見がもっと荒れる可能性もあったはずですし、うまくフォローした樋口さん流石だなと思いました。

*1:質疑応答コーナーの前のトークで、「特撮博物館」の言い出しっぺは誰だったか、みたいなやりとりが庵野さんと鈴木さんの間で何度かあった