『リヴィジョンズ』をNetflixで全話完走。1話時点で今期一番楽しめた作品だったのですが、ネトフリで全話一挙配信されるのは大きな利点であると共に、すぐさま全話観終わってしまうのは贅沢なものの、勿体なくもあります。
週に1話ずつ公開していくことでファンが話題を共有しやすくなる側面は確実にあるので、それを放棄して全話一挙公開してしまうのはそれなりに宣伝的損失があると思うのですよね。集中してガガっと観たい気質の自分にとっては、おかげさまで楽しい週末を過ごせたわけですが。
この記事に具体的なネタバレはあまりありませんが、これからテレビで視聴予定の方は一応ご注意を。
1話でシーツを隠されている犯人の死体は実は主人公の未来の姿だとか、死体が映らないのは死んでいないからで実は悪の組織であるアーヴを欺くための策略だったとかいろいろ予想してたけど、ことごとく外れましたね。
1話時点では渋谷の転送や敵の攻撃すら、未来の主人公がミロの予言を成就させ英雄になるため自ら仕組んだものなのではないかと『メメント』のようなオチを妄想してたんですが、さすがにそこまでのクズキャラではなかった。
戦闘描写は絵としては整っていましたが、一歩踏み込んだ本作ならではの格好良さや特色みたいなものが見受けられなかったのが残念。ロボットが万能すぎてなんでもありなので、逆に印象に残らないというか。『ギアス』でもその傾向はありましたが、あちらは性能がしょぼい通常のメカと対比する形でランスロットと紅蓮があったんですよね。
せっかく未来漂流モノなのに、インフラが止まって困る描写がほぼ皆無だったのも物足りなかったです。これは絵的なリソースの問題といういよりは、1クールという尺を考えた上での取捨選択なのかな。『正解するカド』で日常が侵食される空気感が描かれていたのとは対称的。作中かなりの死者数が出ているのに、それを気遣う描写がほぼ無かったのはもはや潔さを感じるレベル。
民衆をどう描きたいのかもどっち付かずに感じた点。いい加減食傷気味な無責任にデモに興じる人たちの描写やら、主人公らに罵詈雑言を浴びせる無理解な民衆を描いたと思ったら、すぐ後に素直に応援する様子を描いてみたり。群像劇ではなく主要キャラに寄せた物語を展開する今回の方針のアオリを受けて、ここは特に大味になってしまったように感じます。
谷口:『無限のリヴァイアス』は、人々の民衆としての群像劇を作るつもりでいました。『revisions リヴィジョンズ』は限られた人数がどうなるかを描いています。敢えて言うなら、大介を中心とした個人及びその周辺のドラマに絞り込んであります。そこが違いでしょうね。
尺でいうと、主要キャラ5人でさえどうも存在感が薄いキャラがいたな〜という印象が拭えません(ルウなんて特に)。重要な役どころの慶作ですら母親や報われない片思い関連の記号的な描写が殆どで、さほど印象に残りませんでした。
1話で生徒を見捨てた先生なんて再登場するなり大介に色仕掛けで擦り寄ってきたわりに、その後別段ゲスい方向には掘り下げられず、そのまま心を入れ替えて正義に従事していたり。敵サイドも、あからさまに胡散臭い大塚芳忠にまんまと手玉に取られるだけの姉妹とか残念でしたね。その分芳忠はいきいきとしてたけど。
こうしてみるとかゆいところに手が届いてない部分が多いものの、つまらなかったかというと決してそんなことはなく。ほどよくクリフハングしていく次話数へのヒキや、底抜けにイラッとさせてくれるユニークな主人公像などはたいへん良かったです。上記インタビューで谷口監督も触れてますが、声優の内山さんの演技も大介の振り切れた性格を最大限引き立てていて見事でした。
最後は続編を匂わせる終わり方でしたが、主人公がだいぶ成熟してしまって今回のウザキャラ芸が使えなくなりそうなので、やるとしたら舞台や登場人物を入れ替えるのかな? 実現したら続きもぜひ観たいですね。
余談ですが、上記インタビューでの谷口監督の碇シンジへの認識が興味深かったです。
『リヴィジョンズ』の主人公について監督に「とてもウザい」と直球で言うインタビュアー笑った。谷口監督の「碇シンジ観」も興味深いですね。 >“碇シンジに共感をしたのか、ただ気持ち悪い男だとみていたはずだ、それでもヒットしたと。共感できる主人公である必要はない” https://t.co/NKSNTLjTON pic.twitter.com/eYSsKVrY6c
— さめぱ (@samepacola) January 14, 2019
谷口:私の方としては、共感を覚えるタイプの主人公を作る気が昔からあまりないんです。監督になったばかりの時に企画担当と言い合いをしたんですが、プロデューサーが主人公は共感を感じることができなければダメなんだと言いました。私は『エヴァンゲリオン』の碇シンジに共感をしたのか、ただ気持ち悪い男だとみていたはずだ、それでもヒットしたと。共感できる主人公である必要はない。それでも話は成立しうるんです。
いろいろな個性を持ったキャラクターを組み合わせ、相乗効果を編み出すのが得意な谷口監督らしい発言です。20年前の滝本竜彦と対談してもらいたい(笑)。