『新劇場版 頭文字D Legend1 覚醒』感想

長年人気を博してきたテレビ・OVAシリーズが既に存在しているにも関わらず、リメイク版を作る意義はどこにあるのか。通常であれば真っ先に抱く疑問だが、この「新劇場版」シリーズは以下のPVの公開と共に制作が発表され、予めそうした茶々を入れる余地が阻まれていた。

純粋な期待だけを胸に劇場に足を運んだが、その期待に違わぬ素晴らしい内容だった。頭文字Dは本当に映像化に恵まれている。
レースシーンがとにかくすっごい。車の質感が良いのはもちろん、車についているエフェクト状のヨゴレや、タイヤが地面をこする際に巻き上がる土煙など、原作絵のエッセンスを実によく活かしている。それだけでなく、車のライトの表現はいちいち格好良いし、車内と車外を縦横無尽にぐるんぐるん動き回るカメラワークも素晴らしい。
テレビ版の、BGMにユーロビートを使ってのトリップ感も好きだったが、今回は総合力でねじ伏せられてぐうの音も出ない。

 
また、原作モノにありがちな、予め用意された物語を駆け足気味に消化していく感じが全くなかったことにもとても好感が持てた。比較的シンプルなストーリーなので、再構成しやすかったというのはあるかもしれないが、主人公・拓海の車に対する情熱が徐々に芽生えていく過程を主軸に、見せたいものが首尾一貫していて素晴らしい。これなら来年夏公開の次回作以降も安心して待っていられそう。